エシカル日本 > 進化するエシカル③~クリエイティブな「捨て方」を提案 坂口真生
連載
2015/05/22

進化するエシカル③~クリエイティブな「捨て方」を提案 坂口真生

fukuhara
エシカル日本

 「エシカル購入」という言葉をご存知でしょうか?これは商品を購入する際に環境や社会に配慮したモノを優先して選択するという考え方です。購入する側が倫理的(エシカル)な買い方をしましょうという事なのですが、今回はその考え方とはある意味反対に位置する「捨て方」を考えさせられる取り組みをご紹介します。大量生産と大量廃棄が日常化する現代社会において、不必要になったモノの捨て方をデザインし、その使い方をクリエイティブにするという斬新な発想と手法で今までの廃棄物処理のイメージを革新し続ける企業が存在します。その活動の最前線で指揮を取る株式会社ナカダイの中台澄之常務取締役にお話を伺いました。

捨て方をデザインする

 1956年創業のナカダイは、廃棄物を『大切な資源』と捉え、3Rを提唱することで、リサイクル率95%超を実現する産業廃棄物処理業者です。

 中台氏「私の入社以来の悩みは、廃棄物処理業は環境負荷を減らすのが仕事であるはずなのに、依頼される廃棄物が減ると会社の売り上げも減ってしまう、という矛盾でした。その解決方法として、廃棄物を徹底的に『分別・解体』し、それを価値あるモノに再生産し、廃棄物そのものを素材として捉える事業方針をナカダイは展開しています。これを“捨て方をデザイン”する『リマーケティングビジネス』と考えています。例えば廃棄処理された1㌔㌘の鉄の塊は50円の価値しかありませんが、この鉄がスプーンになればそこに新たな価値が生まれます。我々はゴミの量を減らした上で質で勝負し、事業収益を下げない方法を考えています」

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工場見学で生産率が35%アップ

 私がナカダイの存在を知ったきっかけも、アーティストやデザイナーがゴミ素材から作ったプロダクトをイベント会場で展示していたのを見たことでした。

 坂口「ナカダイは廃棄処理の工場見学ツアーやワークショップにも積極的に取組まれていますね」

 中台氏「破棄物処理の過程で行われる選別・解体作業がいかにクリエイティブであるかを身を持って感じてもらいたいという想いから生まれたプログラムです。また廃棄物処理工場の現場は実際はとても清潔な場所だと、一般の方々に知って欲しかったというのもあります。2年前は年間百人程度だった見学者の数も今年は千人に達する勢いです。プログラム導入によって社員のモチベーションに変化が起こり、結果として生産率が35%以上向上するという事業メリットも生まれています」

廃棄物処理のブランディング

 坂口「処理後に加工された素材を集めたショールームの存在もとても斬新ですね」

 中台氏「企業やクリエイターなど、広く一般に向けて“モノ”の使い方を提案する拠点『モノ:ファクトリー』を運営しています。品川にあるショールームは弊社のメディア基地的な存在であり、既存や新規の取引先様に対する信頼・ブランディングに繋がるものとなっています。廃棄物処理業者にブランディングが必要なのかと思われるかもしれませんが、とても大切なものだと考えています。どうせ捨てるならナカダイに任せるのが良いのではと考えてくれる取引先が実際に増えています」

同業者を募集中!

 坂口「ナカダイが思い描く産業廃棄物処理の未来像とはどのようなものですか?」

 中台氏「一般の方が素材や原料を探す際に、廃棄物から生産された素材を探しに行くのが普通となるような未来を作りたいですね。廃棄物ジャンルの確立です。大きくは環境の仕組み自体を変えていきたい。大量廃棄が前提となっている現在の日本の状況は過渡期ではないかと思っています。『モノ:ファクトリー』を通じて多くの方々から様々なご意見をいただいているのですが、実は同業者からの意見が少なく残念に感じています。より多くの産業廃棄物処理業者のご意見をいただきたいですし、ナカダイが培って来た経験をシェアすることで日本の中で成功事例を一緒に作っていきたいと思います」

 不必要になったモノの捨て方をデザインし、使い方をクリエイティブにするという考え方は進化するエシカルの真骨頂ではないでしょうか。企業人として、一個人として、ナカダイの取り組みから多くのことを考えさせられます。今後の活動も非常に楽しみな企業のひとつです。

さかぐち・まお アッシュ・ペー・フランス株式会社/roomsエシカルエリア ディレクター

環境新聞2014年8月6日付掲載

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