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日本エシカル推進協議会
2015/06/16

日本エシカル推進協議会設立1周年記念総会 開催結果記録

fukuhara
エシカル日本

 

日本エシカル推進協議会設立1周年記念総会 開催結果記録

 

1.日時:平成27年5月30日(土)10時00分~12時00分

2.場所:東京大学生産技術研究所 An棟 大会議室

3.開催結果記録

 日本エシカル推進協議会(以下 JEI)の設立1周年の機会を捉えて、記念総会を開催し、各WGの座長による活動報告を中心に進捗状況が報告された。

(1)山本良一代表(東京都市大学)による報告

①     5月20日に消費者庁「倫理的消費」調査研究会の第1回会合が開催された。本委員会は調査研究会として開催され、山本良一代表が座長を努め、2年間は継続の予定でスタートした。第2回会合は6月末頃、第3回会合は8月頃の開催を予定している。本委員会の委員28名のうち、14名は本JEIメンバーである。

②     消費者庁のプロジェクトでは、エシカルを通じた地方創生の観点も盛り込まれており、鳥取県、徳島県がモデルとして選定されている。

③     エコプロダクツ2015の会期中の12月12日に消費者庁の企画として「エシカル消費サミット」を開催する計画が進んでおり、現在消費者庁を通じて登壇の依頼作業が進められている。次年度に向けてはエシカルをテーマとした国際ワークショップの開催も検討していきたい。

④     個人的な異動もあり、現在JEI全体の事務局機能は、私(山本代表)が担当しているが、6月からは副代表である中原秀樹先生に事務局機能を移管することにしたい。また、事務局体制の整備の観点から現在の150人体制での個人参加の形態は維持しながら、別途会費を徴収して運営する団体の設立も併せて検討していきたい。

⑤     APO(アジア生産性機構)が6月に台北で開催する国際ワークショップで基調講演を行う予定があり、この場でもJEIの活動について報告をしていきたい。

 

(2) 中原秀樹副代表(東京都市大学)による報告

 エシカルについての海外調査の方向性について報告された。

海外では消費がより良い社会の創生に繋がるという思考が存在するが、日本ではまだその土壌が十分に育っていない。エシカルの後ろ盾となるのは、ISO26001:CSR企業の社会的責任ということになるが、国内では労働や人権、コーポレートガバナンスなどの整備が海外に比べてやや遅れ気味と認識している。一方でgreen washの問題も避けては通れない。必要なことは透明性とトレーサビリティだと思うので、本日ご紹介したオーストラリアやイギリスの例なども含めて調査をしていきたい。

 

(3) 酒井剛氏(環境新聞社)による報告

①     環境新聞社の協力により立ち上げたWEBサイト「Ethical 日本」(http://ethicaljp.com/blog/)による情報発信状況が報告された。本サイトはエシカルの普及を目的に運営しており、JEIの情報発信媒体としても活用している。本日の総会の配布資料なども要請があれば掲載することもできる。

②     本サイトの運営に係る費用はサイトの広告収入などでまかなっているので、趣旨に賛同いただける方には是非協賛をお願いしたい。

③     WEBサイトでは、「エシカル理解度」診断も公開している。

 

 

(4) 生駒芳子氏(ファッションジャーナリスト)/坂口真生氏(H.P.FRANCE)による報告

①     新宿伊勢丹でのエシカル特集、環境省のクールビズイベントでの紹介、また、渋谷のヒカリエでも坂口氏のプロデュースする「Ethical days」(5/31まで)のイベントが開催されるなどエシカルの概念の露出も徐々に増えてきている。

②     この流れを受けて昨年に引続き、エコプロダクツ展の会場でエシカルイベントを展開する。本日は協賛募集の側面も含めてエコプロダクツ展での企画コンセプトを紹介する。今回の企画は「Ethical Land」の名称で「遊びから未来をつくる」をテーマに30~40代の感度の高い女性層をメインターゲットに企画を構成する。併せて協賛枠と露出の度合いについても紹介された。

③     例えば、恵まれない環境からネイルアーティストとして成功した女性の事例紹介、「Ethical縁日」など分かりやすい切り口で参入のハードルを下げ、社会的課題を自分ごととして捉えて解決に繋げていくための気付きの部分を演出していきたい。ロンドンではエシカルの要素がないと物が進まないケースもあり、日本国内の感度を上げていくことにも取り組んでいきたい。

 

(5) 足立直樹氏(レスポンスアビリティ)による報告

 WG2の座長である足立氏よりエシカル調達ガイドラインの項目設定の検討状況が報告された。

現段階ではガイドラインを構成する具体的なリソースもない状態であるが、組織委員会に早期に配慮すべき項目だけでも伝えた方が良いので、その頭出しを行いたい。ただし、この段階で各論に入ると議論が拡散するため、現在の段階では大きな構成要素として不足しているものについてのみご指摘をいただきたい。

【ロンドンの基準を踏襲した場合のガイドラインの大項目(案)】

①責任ある調達、②再生資源の利用、③環境影響の最小化、④健康に配慮した物質

 

【参加者からの意見】

n  コストや実施体制の面でロンドン五輪の結果が知りたい。

→WEBサイトなどで詳細なレポートが公開されているのでご覧いただくのがよいと思う。

参考:http://learninglegacy.independent.gov.uk/themes/sustainability/london-2012-sustainability-plan-and-reports.php

n  東京五輪で使用するエネルギーを東北の自然エネルギーでまかなうことはできないだろうか。

n  選手が着用するユニフォームにエシカルなもの(例えば、オーガニックコットン)を採用することなどはできないだろうか。

n  エシカル調達の実現のためにはサプライチェーンの川上から川下まで把握できていることが重要。

n  環境以外の項目も網羅できる項目設定が必要であろう。

n  ロンドン五輪では大きな労働問題は出て来なかったが、日本では近年労働問題が増えている。東京五輪のガイドラインを作成する際には人権配慮の項目も重視すべきではないだろうか。

n  項目の設定の際には日本らしさも考慮して欲しい。日本は古来より自然との共生を行ってきており、この点は海外に対して誇るべき点であると思う。現在はヒューマンスケールを越えた消費がなされているという課題点もあるが、発信の方向性として日本らしさも是非取り入れていただいたい。

→日本が自然との共生で素晴らしい文化を築き上げたのは事実であるが、反面、経済成長のために海岸線の半分以上を改造するなど、景観と生態系を急速損ねてきた戦後の歴史もある。このことを海外から問われた時に我々は明確な回答を出すことはできないだろう。この点も踏まえてどのように発信するか、東京五輪の開催に向けては国際的に通用するロジックをつくることが必要。

n  ご指摘の点は事実として理解する。しかしながら、いま日本人はいろいろなことに対して自信を失っているように思える。東京五輪の開催を契機に自らの歴史や文化に自信を持ち、それらを通じて失った自信の回復に繋がる要素を取り入れていくことを希望したい。

n  食の問題で日本が国際的に通用する倫理観を持てるかについては心配な面がある。

→確かに優れた食文化がある反面、日本には世界の水産資源を食い尽くそうとしているマイナスの側面も存在している。この点を検討材料として認識する必要があるだろう。

n  各基準を実現するための具体的なツールのカテゴリ分けを行う必要があるのではないだろうか。

n  ①責任ある調達のカテゴリに「反社会的勢力の排除」の項目を追加していただきたい。

n  環境影響評価の部分では、例えば、使うときなのか、作るときなのか、どこかの項目に含まれているのかもしれないが、適用する場所の区分はあった方が良いと思う。

→使用時は「環境影響の最小化」に、作るときの影響は「責任ある調達」に含まれている。

n  各概念には相反するものも存在すると思うが、重複した際の扱い方のポリシーの設定が必要。

n  規制への対応の面で現在は電機業界関連の規制が中心になっているが、自動車、建築など五輪の開催に関連する業界に関する規制も網羅した方が良い。

n  諸問題に対して提供されるソリューションによる削減効果もカテゴリとして取り入れた方が良い。

n  日本では実情にそぐわないという理由で「動物実験の排除」を割愛するかという意見もあったが、グローバルに通用する理念という視点で検討するのであれば、敢えて外すというのも適切な措置とは言えないのではないかと思う。

n  (ロンドン五輪では、どうして第三者認証型のラベルが採用されなかったのかという質問に対して)日本環境協会 宇野治氏より、イギリスには開催当時、いわゆるTYPEⅠ型の環境ラベルは存在しなかったとの補足があった。

n  各ツールやソリューションのモニタリングを誰が行うのかの議論が必要。

→本日体調不良によりご欠席のWG3座長の渡辺龍也氏(東京経済大学)が監査NGOの設置に関する検討を進められている旨が山本良一代表より示された。

n  調達や購入に関しては具体的な例示ができる場の整備も必要ではないだろうか。当事者自らの発信だけでなく、理念を浸透させるためには受け手側の参加型の要素も必要だと思う。

n  この意見を受けて末吉里花氏より、自身が運営する「エシカル協会」のWEBサイトが紹介された。

n  理念を浸透させる上でエンターテイメント性も確かに重要であるが、現段階ではまだ危機感も足りていないと思う。2020年という時間軸を考えた時に、消費者が気付いていなくても準備が進んでいるように今の段階から経営者レベルがプレッシャーを感じるように働きかけていかないと間に合わなくなるのではないかと思う。

 

以上をもって、設立一周年記念総会を終了し、12時に閉会した。

 

写真は山本良一氏(昨年の第1回総会時のもの)

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