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連載
2016/02/04

再生紙をオーダーメイド~進化するエシカル⑧ 坂口真生

fukuhara
エシカル日本

  「3R(Reduce、Reuse、Recycle)」は読者の方も良く目にする言葉の一つだと思います。2000年に循環型社会形成推進基本法(廃棄物とリサイクル政策の基盤となった法律)が制定された際に導入された理念のキーワードですが、現在はさらに言葉が加わり4R、5Rまたは7Rとも呼ばれたりしています。その加わった言葉の中の一つに「Refine(リファイン=分別)」があるのですが、今回は私がその“分別”について改めて考えさせられるきっかけとなった企業の取り組みを紹介します。
 山陽製紙(大阪府泉南市、原田六次郎代表)は、産業用梱包資材や電子部品用間層紙、製袋用関連商品などの紙を生産販売する1957年創業の製紙会社です。
 環境配慮や社会貢献を経営理念の軸に持つ同社は、60年間再生紙を作り続けてきた技術と経験を生かし、梅の種やみかんの皮、コーヒー粕などの食品残渣を利用したり、広島の折り鶴を再生紙にするなどのさまざまな活動を通して理念を具現化されています。

 「段ボールや雑誌、新聞紙など古紙の回収率は年々向上しており、日本は世界でもトップクラスの水準に達しています。しかし、そのような中で回収ルートに乗らない、使用済みのコピー用紙などの『オフィスペーパー』やお菓子の箱、チラシなどの『雑紙』と呼ばれるものは生ごみなどと混じって焼却処分されている実情があります」と話すのは山陽製紙の原田千秋専務取締役。原田氏は同社の環境活動の舵を取る役割を担っています。

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 「大阪市が事業系ゴミの組成分析をしたところ、資源化可能な紙類が全体の23%を占めていると分かりました」と原田氏はいいます。トン数にして8・3万トン(2010年度実績)。大阪市ではこれを㌔㌘あたり11・7円のコストをかけて焼却しているそうです。そのため、13年にこのような紙ごみが混じっている場合は引き取りを拒否するという条例が施行されました。
 これは大阪市に限ったことではありません。これ以上焼却場を増やさないために、どの自治体も事業系のゴミだけでなく各家庭でのきめ細かな紙の分別の推進を図り、資源化するべく啓蒙活動を行っています。

 同社の再生紙サービス「KAMIDECO」は、こうした状況の中で生み出されました。企業や学校などで不要になったコピー紙を回収して100%再生紙を作り、紙製品にして回収元の企業や一般消費者に販売するサービスです。
 回収されたオフィス古紙は、環境に配慮しながら同社の紙すき職人が手間暇かけて風合いのある上質な再生紙に仕上げていきます。
 また、私が感心したのは、10㌔㌘というごく少量から参加することが可能な「KAMIDECO BANK」という仕組みです。銀行にお金を預けるように「使用済みコピー用紙」を預けて預金ならぬ預紙をし、その預紙が300㌔㌘貯まったところで製紙マシンが動き「100%再生紙」をつくるサービスです。
 通常、紙の製造ロットは最小でも5~6㌧とのことなので、このサービスによって企業や学校が導入しやすくなるのではないでしょうか。

 三陽製紙では、企業などの製造過程で発生する副産物を紙にすき込み、不用紙を再生する「紙のオーダメイド」も行っています。「回収~製紙~企画・デザイン・商品化~お返し」というサイクルによって、機密文書などの紙ゴミに付加価値を付ける仕組みです。
 また産業廃棄物である「梅の種」を炭焼き技術によりリサイクル炭の「梅炭」に変えて再資源化し、独自の製法で紙にすき込んだ「梅炭クレープ紙」を開発。梅炭と古紙100%で作った再生紙でありながら、炭の持つ「消臭」「脱臭」「調湿」機能も併せ持つ独自の製品作りも実現しています。

 原田氏は「以前、環境に配慮したサステナブルな都市として注目されるスウェーデンのマルメ市を視察で訪れた際に、市の専門家から聞いた『ビジネスに繋がらないエコは無い』という言葉にとても大きな衝撃を受け、現在の活動をスタートさせるきっかけの一つとなった」と言います。
 自分たちが出した紙ゴミが循環して帰って来るというのは素晴らしい仕組みだと思います。この仕組みに対し、あえて課題を上げるのであれば、私個人は企画デザインの質と商品の価格ではないかと思います。

さかぐち・まお/アッシュ・ペー・フランス株式会社 roomsエシカルエリア ディレクター

環境新聞2015年1月14日付掲載

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