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2016/02/17

国際認証講座 ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~ ⑥ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 

 森林認証については過去に何度か触れているが、2020年のオリンピック・パラリンピック東京開催に向けた動きと期待について探ってみたいと思う。まず、森林認証の中でも、よく国際的にも代表的に紹介されるのが、FSC(Forest Stewardship Council=森林管理協議会)であろう。FSCは1993年に創設され、現在の国際本部はドイツのボンにあり、国際的な森林管理の認証を行う協議会として活動している。FSCの主な認証の形態は2つあり、まず森林の管理・経営を対象としたFM認証(Forest Management)と、その認証された森から搬出された林産物の加工・流通過程の管理を対象としたCoC認証(Chain of Custody)とがある。そして、サプライチェーン全体が繋がることにより、最終製品にFSC認証マークがラベリングされる、という制度であり、そのビジョンは、世界中の森林が、社会、生態系、経済の面で、私たちの権利とニーズを満たし、将来の世代へも欠くことなく受け継がれていくこと、である。
 FSCの製品は日本でも少しずつ見る機会が増えてきた。以前から環境・CSR報告書では見受けられたが、現在では紙製品やノート、ティッシュ、木製品、ドリンクのパッケージに至るまで、より身近になってきたことだろう。しかし、一方で森を巡る問題は山積であり、日本の森の手入れや自給率の向上の必要性、さらに、海外では森林破壊や違法伐採が後を絶たない。例えば、ロシアからの違法木材が国境を越えて中国へ入り、テーブルや椅子、ベッドなどの家具やフロア材、構造材へと加工され木材製品として形を変えて世界へ輸出される事例もある。自然に優しいとかナチュラルな風合い、天然木などと書かれると、何だか良さそうなイメージを持たれるかも知れないが、適切に管理された森から来たものがどうかの証明が浸透しているとは言い難く、まだ潜り抜けられる方法が少なくない。
 その対策として、アメリカのレイシー法では違法に伐採・採取された植物種も規制の対象となり、EU木材規制や先日出された国連気候サミットの「森林に関するニューヨーク宣言」などさまざまな規制や目標と行動指針が世界では出されているが、日本国内におけるその拘束力とより積極的な行動が、オリンピックを目指して加速すると思われる。
 オリンピックと森林認証との関係では、2012年のロンドンでは持続可能な開発戦略によって、合法かつ持続可能な原材料の使用を規定、FSCとPEFCの認証材が使用され、その割合は95~100%で建設されている。チケットなどの紙についても認証紙が使用された。さらに、2016年のリオへ向けても、サスティナビリティマネジメントプランが作られ、同様の動きがみられる。
 一方、2020年の東京オリンピックではどのような戦略になるのであろうか。海外からの期待に日本がいかに応え、レベルの高いアクションに繋げられるかが問われる重大な局面だとも言える。
このテーマに対して、FSCジャパンの担当者が以下のようなコメントを寄せて下さった。
 「ロンドンオリンピックでは、リサイクル以外の紙のほとんど、また、競技施設・選手村の内装材・観客席・ストリートファニチャーなどの木材の多くにFSC認証材が使用されています。これは、ロンドンオリンピック組織委員会が意識的に、環境戦略、調達方針にFSCの木材や紙を使用することを謳っているからです。近年のオリンピックでは、「環境や社会に対する責任を果たす供給」が大きな目標に掲げられており、これをさまざまな利害関係者から見て客観的に証明できるFSCのような『第三者認証』をツールに使って実現しています。次に行われる、リオオリンピックにおいても同様です。2020年までのオリンピックがこのような『遺産』を積み重ねる中、東京オリンピックがこの歴史にどのような足跡を残すのか、世界中の利害関係者が注目していると言えましょう。現在、世界の森林関係のNGOなどから、世界の森林保全において現状の日本のグリーン購入法では限界があることが指摘されています。是非、東京オリンピックでは、FSCのような第三者認証を大きく活用して、グリーン購入法以上の調達方針を掲げていただきたいと思います」

やまぐち・まなみ/Control Union Japan 代表取締役

環境新聞2014年10月29日付掲載

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