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2016/03/22

国際認証講座 ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~⑦ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 私たちは実に多くの機会に恵まれながら生きている。しかし、それが幸せを感じる機会が多いことと同じだとは限らない。日本はさまざまなモノに溢れ、情報も自分が望めばそれなりに入手することができる。自分の国のこと、歴史、字を書くことも読むことも、数字を覚え算数を習い、日々の生活に必要だと思われる学習の機会と教育の場を、当たり前のように受けながら学校へ通って成長することができる。一方で世界を見渡すと、その機会を得ることすら困難な状況下におかれた子供たちもご存じのように少なくない。
 私の子供は来年小学生だが、同じ年齢の子供が、その生まれた環境の違いでどのような生活を送っているのか。おそらく日々の生活習慣もさまざまだろう。先日インドを訪れる機会があり、認定NPO法人ACEが取り組んでいる現場などを訪問させて頂いた。ACEの取り組みによって児童労働がなくなったという村で出会った子供たちは、生活は物質的には豊かとは言い難いかもしれないが、目をキラキラ輝かせ、とても生き生きしていた(写真)。新興国で暮らす子供たちに会うと時々感じることがある。日本の子供は豊かな部分も多いかもしれないが、幸せ基準で言えばどちらが満たされているのか、と。

 子供たちは学校に通っていて覚えたという英語で、自分の名前を教えてくれて、私にも尋ねてくれる。カメラを向けると、皆「私も撮って!」とポーズをとり、画面に映った自分を見ると嬉しそうに「もう一回!」とせがんだり、照れたように笑っていたり、笑顔が絶えない。その親たちも自分たちが仕事を手にし、家族がみんな良い方向に向かっていると口々に話してくれた。
 また、認証を取得している企業の訪問時、経営者の考えも素晴らしく、そこで働く女性たちも素敵で、文化も持ち物も違う私たちだが、私がいずれ食べるかもしれない、着るかもしれない原料を、何カ月もかけて栽培して下さる人々、その原料をもとに製造する企業の方々がいて、はじめて私はここに立っていられるのだという、当たり前の事実があった。その背景に広がる世界の隔たり、問題をどうにか解決していこうと試みる素晴らしい方々、その繋がりがあって社会が成り立っていること、認証はそのチェーンを繋ぐ一つの役割としても時折機能する。

 世界では過酷な児童労働をする子供が1億6800万人いると発表されている。5歳から17歳の9人に1人の割合であり、さらにインドではコットン種子生産地域の約90%を占める4州で約38万人の児童労働者がおり、70%が女子だという。
 社会的責任における国際規格はISO26000があり、さらにSA8000、今まで紹介しているようなサプライチェーンおける認証など、人権や労働の搾取については各分野の認証基準の社会的側面で登場する。国連のグローバルコンパクトでも児童労働を実効的に廃止するとあるが、企業活動のすべての面において、このリスクがないと確証を経るには、児童労働の報告数からいっても、もっと果敢に挑戦し続けなければならないだろう。

 認証審査機関は、当然ながら四六時中監視し続けるわけではなく、不完全だと指摘されることもあるが、認証はいわば、特定の分野に絞って、そうあってほしいという理想について議論し合い、基準という策定された物差し通りになっているかを、第3者の立場で確認するもの。特に人権分野はいつも議論になるのだが、共に幸せな社会を築き、働くということについては決して答えが一つとは限らない。それぞれの地域と文化を重んじながらも、社会的問題を解決するツールとして認証のさらなる開発と活用を願うこの頃である。

やまぐち・まなみ/Control Union Japan 代表取締役

環境新聞2014年11月26日付掲載

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