エシカル日本 > 国際認証講座 ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~⑧ 山口 真奈美
連載
2016/04/19

国際認証講座 ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~⑧ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

最近、環境分野に従事されている方々との話題の中で、社会貢献とかエシカルとかいう言葉が普通に登場することも少なくない。その中でエシカルと認証の繋がりについて考察すると、今すでに展開されているさまざまな個々の認証がどの部分でどうエシカルなのか、となるがそもそもエシカルに明確な定義がないことが、今までの良い点でもあったと思われる。

 「これがエシカル、それはエシカルを主張していても違う!」と誰が断言できるだろうか。人の感性や価値観に判断を委ねられてきたエシカル市場が、「倫理的な・道徳上の」といった言語の意味から、一つのブランディング要素として確立しつつある中で、当然グリーンウォッシュならぬエシカルウォッシュが出てきても困る、という見方もあるだろう。
 エシカルに繋がりそうな認証を見てみると、その基準は森や海等の地球環境や社会問題など、対象となる問題も品目も違うが、ベースとなる共通部分に環境・社会・経済・ガバナンス・トレーサビリティなどが挙げられる。その認証が原材料の調達時における問題点を原点としていても、その加工流通過程において確認すべき項目が、原材料のトレーサビリティーのみならず、環境へのダメージが少ないか、労働の搾取等、社会的問題が潜んでいないかなど、多くの要素を包括している基準もあり、多角的に確認することで付加価値が生まれ、企業活動の信頼に繋がる補助的役割の一端を担っている。

 エシカルと呼ばれる製品やPRでエシカルをうたっているもの以外にも、潜在的にエコや環境・CSRの活動の一環として企業の皆様が取得された認証が、実はエシカルにも繋がっている、ということもあり得る。企業は一般消費者にいかに認証の意義を伝えるのかを苦労されていると伺う。木材や紙を使用していれば、森の保全の観点から「FSC・PEFCを取得しました。」海であれば、「MSC・ASC製品です。」ファッションでは「GOTSのオーガニック製品です。」などなど、広報しているけれど、消費者が買ってくれない、理解しているのかと…。もっと認知度が向上して、普及してないと困るという声も多々ある。
 一方で消費者やエシカルに関心がある層の方々に「エシカルな製品って何ですか?何を基準に選択すればいいですか?どんなマークがついていればエシカルですか?どこに行けば買えますか?」という具体的なアクションに繋げるための質問を多く受ける。
 特に、女性は気軽に素敵に、そして自分にとっても社会にとってもいい暮らしをしたい。とシンプルな想いがある。原材料調達から手にする製品までのチェーンが長いものであればあるほど、都市で生活する人々にとっては少々難しい、ライフスタイルそのものを模索しているのかもしれない。本当の価値を求めて熱心に情報を収集し、納得のいくものを選ぶ方もいれば、製品の背景まで想いを馳せることなく、価格とデザインで選ぶ方もいる。そのどんな方々でも、手にする製品が将来的には環境や社会に配慮した、エシカルなものに転換されることで、結果的に企業活動のリスクを回避し、安定的な原材料を調達し製造過程での問題リスクを抱えることなく、美学を持った経営に繋がるのではなかろうか。

 一見素敵だと思えるものでも、その背景を知ってしまったら消費者は継続的に選択してくれるとは限らない。美しく輝いている宝石にどのような人々が採掘から製品ができるまで関わってきたのか。もしブラッドダイヤモンドのような背景を持っていたら、目に移る輝きははたして本物の輝きに見えるだろうか。自然を壊し、劣悪な環境で出来た服や製品を纏って気持ちよい日々を送れるだろうか。見た目には美しいものが世の中には溢れ、メディアを中心に価値観自体があるときは誘導されつつある今、誰にとってもより良い社会の創造へ、消費者教育や価値観の形成とモノづくりが連携しながら、エシカル活動が加速することを期待している。

やまぐち・まなみ/Control Union Japan 代表取締役

環境新聞2015年1月28日付掲載

Facebookで更新情報をチェック!

関連記事