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連載
2016/05/11

ソーシャルコンシェルジュのエシカル手帖⑩~サステイナブルな旅 林民子

fukuhara
エシカル日本

  ゴールデンウィーク、皆さんはどのように過ごされたでしょうか?今回は、サステナブルな旅のお話。20年以上続けている私のライフワークの一つが「ソーシャル・トラベル」と呼んでいる旅のスタイル。ホテル、レストラン、ショップ、アクティビティなどを選ぶ時に、環境やコミュニティに配慮している場所、モノ、サービスを選択する旅です。

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 昔から、先進国、途上国含め、プライベートやビジネスで旅することが多いのですが、なるべく旅先の環境に負荷をかけることなく、自分も楽しみながら、できる限りその地域に還元・貢献できるような選択をするように心がけてきました。
 欧米のメディアでは、私が「ソーシャル・トラベル」と呼んでいるこのような旅は、「サステナブル・ツーリズム」、「グリーン・ツーリズム」、「リスポンシブル・トラベル」、「コンシャス・トラベル」という言葉で表現し、ここ数年頻繁に目にします。
 皆さんは、宿泊先を決める時、どれくらい“エコ”であること“エシカル”であることを意識するでしょうか?日本では、食べ物、化粧品、ファッションなどは、“オーガニック”や“エシカル”であることを意識する人は増えていますが、旅行についてはまだまだ意識が低いような気がします。

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 例えば、日本でも利用者が多い、世界最大の旅行情報ポータルサイト「トリップアドバイザー」。そのトリップアドバイザーがスタートさせた「グリーンリーダーズプログラム/Green Leaders Program」(日本語サイトでは、エコリーダーズプログラム)の“グリーンの葉”マーク、どれくらい意識しますか?
 2013年にアメリカで始まり、翌年にはヨーロッパでも始まったこのプログラム。環境に優しい取り組みを積極的に行っているホテルやB&Bを総合的に評価し、基準に満たした施設を4つのレベル(プラチナ、金、銀、銅)で認定。
 国連環境計画(UNEP)、アメリカ環境保護庁エネルギースター・プログラム、グリーンビルディング評議会などとの協力によりプログラムが作られています。評価基準項目は、地元のオーガニックな食材の利用やタオルの再利用、ごみ資源のリサイクルや堆肥化、節水システム、太陽光パネルなどの自然エネルギー利用、省エネ家電の利用、環境に負荷をかけない建築など多岐に渡っています。残念ながら、日本のホテルでは、まだこの「グリーンリーダーズプログラム」は導入されていないようです。

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 このプログラム以外にも、エコフレンドリーなホテルを評価し認証を与えている「Green Globe(グリーン グローブ)」や「Green Key(グリーン キー)」などもあります。日本でも13年に厳しいBIO(オーガニック)基準を規約とする「ビオホテル協会」が発足しましたが、認定ホテルはまだ1軒だけのようです。
 とはいえ、サステナブルなホテル認証を敢えて受けていなくても環境に配慮し、地域に貢献している旅館や民宿もあります。日本の旅館の中には、地元の木材で家屋や家具を作り、地元の食材を使い、地元の職人による伝統工芸品を積極的に取り入れるなど、ある意味、その地方の文化や特産品を紹介するショーケース的な役割を担っています。これも一つの重要なサステナブルな基準ですよね。
 人それぞれ、さまざまなサステナブルな旅の評価基準があっていいと思っています。この記事がそれを考えるきっかけとなれば嬉しいです。

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「トリップアドバイザーのグリーンリーダーズプログラム/Green Leaders Program」

https://www.tripadvisor.com/GreenLeaders

「グリーン グローブ(Green Globe)」

http://greenglobe.com

「グリーン キー(Green key)」

http://www.greenkey.global

ビオホテル協会(Die BIO-HOTELS)

http://www.biohotels.info/en/

「ヘリタンス・カンダラマ」

http://www.heritancehotels.com/kandalama/

「トリランカ(TriLanka)」

http://trilanka.com

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3点の写真は「トリランカ(TriLanka)」ホテル。リサイクル木材を多用し、地元シナモンの木の廃材をゲストルームの西側の窓に装飾、日よけとして設置。食材は基本的に地産地消のもの。全ての建物にルーフガーデンと太陽熱温水パネルを取る付けている。

下4点の写真は「ヘリタンス・カンダラマ」ホテル。ホテル内のエコパークには、野生動物が怪我した際に治療する「アニマル リハビリ センター」(下から3番目)や「象の糞と紙くずをミックスし、リサイクルぺーパーを作る工房」(下から2番目)、「資源ごみの分別センター」(一番下)がある。分別センターで分別した資源ごみは、回収業者に販売し、その収益金は、地元コミュニティの学校建設などCSR活動に使用されるのだとか。

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はやし・たみこ/NPO法人ソーシャル コンシェルジュ/SHOKAYジャパンオフィス 代表

2016年5月11日付環境新聞掲載

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