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連載
2016/07/13

ソーシャルコンシェルジュのエシカル手帖⑫~「自然、人、動物をリスペクトする」暮らしの広がり願う 林民子

fukuhara
エシカル日本

  エシカルな暮らしを提案してきて早10年。これまで”エシカル“の定義を、私流の解釈で、日本人のDNAに根付いている、“自然や人をリスペクトする“暮らしという意味で広めてきました。この連載でもエシカルな暮らしのヒントとなるようにさまざまなテーマで書いて参りました。最終回として、どんなテーマが良いか?悩みました。が、最後にどうしても書いておきたいことがあります。それは、欧米に比べると、はるかに日本は遅れていると感じている「アニマル・ウェルフェア」のこと。

 「アニマル・ウェルフェア」とは、「一般的に人間が動物に対して与える痛みやストレスといった苦痛を最小限に抑えるなどの活動により動物の心理学的幸福を実現する考えのこと」(weblio辞書より抜粋)。
 犬に続いて、日本は今、空前の“猫”ブーム。ペットショップでは、電気が煌々と照らされた小さなケージの中に、“商品”として展示されている猫や犬について、違和感を感じる人はどれだけいるのでしょうか?

 日本の女性で、どれだけの人が、動物実験をしないコスメブランドを積極的に選んでいるでしょう?日本のコスメブランドの中でも多くの人気商品を揃える資生堂が2011年から自社における動物実験廃止。ポーラオルビスホールディングスが15年1月から、ロート製薬が16年1月から、動物実験廃止を宣言しています。ご存知でしたでしょうか?

 いつも食べている卵が養鶏場でどのように育てられているのか? いつも飲んでいる牛乳。搾乳する牛は、牧場でどのように育てられているのか? 牛、豚、鶏、普段食べているお肉も、どのように育てられているのか? 意識しながら購入にしている人はどれだけいるでしょうか?

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お話をうかがったマネージャーの酒井政明氏(右)

 いずれ殺されてしまう運命とはいえ、生きている間、幸せに育てられた鶏や牛、豚の味は、劣悪な飼育環境で育ったものとは全く違う、と言います。日本でも先月、家畜にできるだけストレスを与えない飼い方の普及を目指して「アニマルウェルフェア畜産協会」が設立されニュースにもなりました。

 そして、もう一つ。競馬を楽しむ方へ。女性も競馬ファンが昨今急増中ですが、怪我や病気になってしまった馬、また高齢になり引退する馬のほとんどが、殺処分になっていることに、思いをめぐらせたことがある方は、どれだけいるのでしょうか?

 日本では9割の競走馬が殺処分になっていると聞きます。去年訪れた北海道岩内町の「NPO法人ホーストラスト北海道」の馬たちのことを思い出します。ここは、現役を引退した馬を、適正な生活環境で飼養管理。馬をトラストとし、草と土と林を守り、自然の中で人と馬がふれあえる環境を作ることによって、子どもたちへの命の教育、人と動物の共存のあり方など社会教育を推進。さらに町外から、この馬たちに触れ合う人たちが増えることによって、地域活性化も目指していると、マネージャーの酒井さんもおっしゃっていました。このような競馬を引退した馬、乗馬を引退した馬たちが、のんびりと余生を送れる養老牧場は全国にあるようです。

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福島の牧場から引き取った馬2頭も、幸せそうに暮らしていました

 中にはホースセラピーを行っているところも。自然豊かな環境で馬と対話するだけで癒される気分になります。前述の酒井氏は、牧場を運営するのはとても経費がかかるとも語っていました。夏休み、ぜひこのような牧場を訪れてみてはいかがでしょうか。それをきっかけにその牧場のサポーターになってみては?

 “自然、人、そして動物をリスペクトする”エシカルな暮らしが、もっと日本でも広がりますように。これまで記事を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございました!

写真はすべてNPO法人ホーストラスト北海道の様子

 

はやし・たみこ/NPO法人ソーシャル コンシェルジュ/SHOKAYジャパンオフィス 代表

環境新聞2016年7月13日付に掲載

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