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2016/08/02

国際認証講座 ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~⑩ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 日本は世界中の食を楽しむことができる。しかもかなり高い水準であり、さまざまな国のレストラン立ち並び、必要な食材の入手も可能であり、品質を高い状態で保つ技術も持ち合わせている。

 この楽しみを支える食料を見ると、食料自給率はカロリーベースで39%、生産額ベース 65%(2013年度)であり、品目によっては高い海外依存により成り立っている。一方、日本国内における年間の食品廃棄量は、食料消費全体の2割と言われ、「食品ロス」と言われる期限切れの食品、売れ残りや食べ残しなど、食べられるはずの食品が無駄にされていることも事実だ。

 豊かな食の裏側では食糧問題、貧困と飢餓、地球規模での気候変動や水問題とバーチャルウォーターなど、日本国内では実感し難い現実が広がっている。東日本大震災から4年、命の重みと自然の脅威、そして、あの瞬間、東京ではご存知のようにコンビニエンスストアやスーパーから食品や日用品があっという間に消え、誰が私たちの「いのちの源」である食を提供してくれているのか、支えてくれていたかを考えるきっかけとなったに違いない。

 私はその時妊娠中で、お腹を抱えながらマンションの階段を登り降りしたのを記憶している。そして、近隣の人たちに支えられて水やお米、さまざまな生活の必需品を提供頂き、海外の知人からもさまざまな物資が届き、こんなにも多くの人々に支えられていること、1日生き延びるだけでもどれだけ大変かを感じた。そして、食の大切さはもちろんのこと、農業の重要性と日本の将来について考え、友人の中には自給自足を目指し、東京を離れ全国各地へと移住していった者も少なくない。

 誰がいのちを支える食を支えているのか。自然の産物に人が手を加え、育て、時には加工し多くの人々のいのちの支えとなる。この農業や食の分野での認証を見てみると、日本では食の安全から認証に取り組む姿は多く見られるが、消費者が口にする安全性の他、そのリスク低減を目指し、さらに持続可能な農業という試みはまだまだ発展の余地があるだろう。

 2020年を目指し、サステナビリティ(持続可能性)の国際規格に取り組む必要性が唱えられ始めている。この声を受けて、さらに国際標準の農場認証取得について、さまざまな動きがみられており、まず、日本政府も2020年までに農畜水産物と食品の輸出額を1兆円水準へ拡大することを目標に掲げた。さらにその実現に向けて農林水産省は取り組みを進めており、具体的な輸出環境の整備対策として、全国の生産地への GLOBALG.A.P.など、国際標準の認証取得の支援へ積極的な動きが出てきている。

 その反面、農業を巡る認証の情報は決して誰でもわかりやすいように整理されているとは言い難く、今後各分野の認証についてご紹介したいと思うが、GFSIやGAPとの関係、各組織や認証の関連性、その内容や国際社会での動きも含め、農業のみならず、農林水産すべてにおいて、日本がどのような舵を切るのかが注目されている。

 日本の農林水産物の生産体制、供給の在り方を国際標準にどこまで合わせ、国際社会で通用する姿を構築するのか、さらに和食を重んじ日本らしさを追求し、おもてなしの視点からも「日本の食と農業」の世界はこの5年で大きく変わる気運が見られる。どこまで本気で変革し取り組んで行けるのか、後継者を育て、農業の在り方をより革新的に進め、日本のみならず世界のいのちを支える食について考察し、行動に移すことができるかを期待したい。

やまぐち・まなみ/Control Union Japan 代表取締役

環境新聞2015年3月25日付掲載

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