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2016/08/17

「レア・アース仮説」とエシカル消費(全3回 上編) 山本良一

fukuhara
エシカル日本

 エシカル消費(倫理的消費)とは、“地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動”のことである。その具体的商品例としては障害者支援につながる商品(人への配慮)、フェアトレード商品、寄付付きの商品(社会への配慮)、エコ商品、リサイクル製品、資源保護等の認証がある商品(環境への配慮)、地産地消、被災地商品(地域への配慮)などがある。

 私たちは、現在大変豊かな消費生活を享受している。それこそ世界のどのような商品でも入手可能である。一方で、私たちは地球温暖化や熱帯雨林の伐採など様々な地球環境問題に直面している。また深刻な貧困などの社会問題が起きている。

 私たちの豊かな消費生活は実はこれらの環境問題、社会問題と密接に関係している。人類は今日、穀物栽培のためには南アメリカほどの広さの土地を、家畜放牧のためにはアフリカほどの広さの土地を利用していると報告されている。人類活動が地球表面全体に及び、したがって他の生物に大きなインパクトを与えている時代に突入しているのである。

 消費者は単に自己の利益だけでなく、国内のみならず国境を越えた他国の人々や、時間を越えた子孫のことまでも考慮した商品選択を行なうことが求められている。すなわち、製品の生産者である企業のみならず消費者にも環境配慮、社会配慮の社会的責任があるのである。エシカル消費がなぜ必要かをさらに深く理解するために、宇宙、地球、生命の進化について見てみよう。

1.宇宙、地球、生命に関する科学的知見の飛躍的発展

 2015年9月14日にアメリカのaLIGOは3,000km離れた2台の検出器により重力波の検出に初めて成功した。この重力波は13億光年先の太陽質量が36倍、29倍の2つのブラックホールの合体によって62倍のブラックホールが形成され、3太陽質量分がエネルギーとなった重力波であった。1世紀前にアインシュタインの一般相対性理論によって予言されていた時空の歪みが光速度で波動として伝わる重力波が初めて直接観測されたことになる。これは輝かしい人類文明の勝利を意味する。

 しかし急いで付け加えなければならないのは、テレビからテレビを、車から車を、高層ビルから高層ビルを地球に大きな影響を与えずに作ることに人類は未だ成功していない。すなわち現在の科学技術文明は持続不可能であり、未熟である。また科学技術文明の恩恵を享受する人口も世界人口の一部にとどまっていることも問題である。

 私たちの太陽系が属する天の川銀河は宇宙誕生後、わずか10億年程で誕生し、2千億個の星からなる。宇宙には1千億個以上の銀河があると言われている。この宇宙自体は138億年前にビッグバンによって誕生し、70億年前より加速膨張している。天体が我々から遠ざかる速さ(後退速度あるいは膨張速度)はその天体までの距離に比例し、その比例定数はハッブル定数と呼ばれ、326万光年あたり67km/sである。宇宙の96%はなぞの物質やエネルギーからなっており、私たちが解明できたのはその4%に過ぎない。しかしこの1世紀の科学の進歩によって人類の宇宙、地球、生命の進化についての知見は飛躍的に高まった。

 その重要な結論の1つは、私たちが生命の誕生と進化を許容する幸運な宇宙、奇跡の惑星に生きているという事実である。重力、電磁気力、強い力、弱い力の相互作用定数が現在の値より大き過ぎても、小さ過ぎても現在のような宇宙を形成することができない。相互作用定数がきわめて限られた範囲の値にない限り、宇宙は生命を誕生、進化させることができないのである。あたかも自然法則の基本定数は、生命の誕生と進化を許容するように微調整されているように見える。誠に不思議である。

 その一つの説明は宇宙は無数にあり(多重宇宙)、知的生命が誕生・進化できる宇宙のみが実際に観測されるというものである。1000という数にはゼロが3つあるが、この無数の宇宙の数は超ひも理論によれば、何とゼロが500個もつくような巨大な数であるという。確たる実験的証拠はまだ無いが、私たちが幸運な宇宙に住んでいることはまぎれもない事実である。

写真は月から見た地球(提供・JAXA/かぐや/NHK)、「地球生命圏こそがパワースポット、ご神体である」と山本氏。

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