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2016/09/15

国際認証講座 ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~ ⑪ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 環境。そのキーワードは広義の意味で地球環境や自然に対して使われることもあれば、実は身近な生活環境まで幅広い。ある日、東北で暮らす伯父に「世界の森も大切だが、この土地の目の前にある森や自然も考えて、何か助けてもらえないものか」と言われた。この地域でも若手がおらず担い手不足であり、多くの課題を抱えながらそれでも変えようと頑張っている方々がいる。

 その後、地元の林業関係者に会う機会があり、森林認証をご存知か伺うと、「ほとんど知らないが、聞いたことはある。知識としては何となく」、もしくは「知っているけれど、自分たちに必要なのだろうか?まだ必要性感じないけれど」、「興味あるから詳細今度聞かせて欲しい」など様々な意見があった。

 新しいことを始めるには、誰がどう提案し、どのように具体的な行動に移すかによって変わる。誰かがリーダーシップをとり果敢に挑戦することで、共感者が増えて活動の輪が広がることもあれば、時には快く思わない人と摩擦が生じることもあるようで、慎重に進める必要があるだろう。また、東京などへ出張が多い方々や、情報を敏感に察知し入手できる人が身近にいるかどうかで、手にする情報量やホットな議論に温度差が出ることもある。行政は国際的な対応と輸出も視野にいれ、認証取得の普及に力を入れ始めているが、既存の取得者の連携もまだ進んでおらず、今後乗り越えなければならない課題は多い。

 日本には実に様々な認証や証明マークがある。地域振興にも使えるようなものもあるが、国際的に知られている認証から、何がしかの差別化のために多数のロゴマークが誕生し、その意味や認知度を考えると、消費者の立場からは「一つにしてほしい。もう少しシンプルにならないのか」との声を多く頂く。

 確かにそうなのである。ISOで進められる認証から、持続可能性を追求し、今起きている問題の解決に向けて協議会のような場が設けられ議論された結果、新たに誕生していく認証など、最終だれがどのように企業の活動に取り入れていくのか。製品に付けられるものでも、あえて付けずに販売する企業も多い中で、一方ではロゴマークの意味のさらなる普及が求められている。

 消費者に対しての安心に繋がるマークから、背景に環境・社会的問題がないという証明として使うものまで、そのレベルは様々である。一人の消費者として思うことは、自分なりの「選択の基準」を持ち、その何かを選ぶ過程で自分が信頼できると思うマーク付きのものがあれば、そちらを優先的に選ぼうということである。しかしながら、まだまだ日常生活の中で普通にラベルを軸に選択できるほど、認証製品が普及しているとは言えず発展途上にある。

 それぞれの認証の設立背景や特徴を理解し、透明性などを検証しながら、エシカルに纏わる認証ラベル全体の信頼性を高める必要がある。そしてエシカル(倫理的)消費の普及と国内外でまだ解決していかなければならない問題について、企業が本業を通じたエシカル活動を推進し、消費者の何気ない選択が結果として、エシカル活動に繋がるような仕掛けと連携した活動をさらに進めていく必要があるだろう。

 そして、国際的に通用する認証の必要性と共に、日本や特に地方などの地域が取り残されることのないような、さらに日本独自として乱立を招くのではなく、既存の認証との整合性や海外でも通用するようなスキームを意識しながら、包括的な施策も考えていかなければならない。

 

写真は著者提供、「林業関係者の森林認証の存在について聞くと、さまざまな答えが返ってくる」

 

やまぐち・まなみ/Control Union Japan 代表取締役

環境新聞2015年4月22日付掲載

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