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連載
2016/10/26

国際認証講座・第2部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~① 山口真奈美

fukuhara
エシカル日本

 今までの連載ではさまざまな国際認証が存在する中、特に持続可能な原材料調達や環境・社会的配慮に繋がる認証の背景などについてご紹介してきた。そこで今回より第2部では農業、水産、繊維、森林など各業界の認証について、いくつか存在する各々の認証の個別紹介や比較、業界の動向や生の声を取り入れていこうと思う。

 その最初の回として、私たちのいのちを支える食から見てみよう。日本の食文化や和食が注目されているが、その食を支える農業の在り方について、日本と世界ではどのような認識がなされているだろうか。まず、食の安全については共通だと思われるが、その基準や評価・実践方法・アプローチはさまざまである。

 過去にヨーロッパでは食品安全に関する危機問題が多発し、欧州の大手スーパーなどの大手小売が独自に策定していた食品安全規格を標準化すべく、2000年にEUREPG.A.P.が設立された。民間団体である欧州小売業組合(EUREP)によるものだったが、その後2007年に改称しGLOBAL G.A.P.となった。

 そもそも、GAPという言葉をご存知だろうか。Good Agricultural Practices の略であり、日本語では適正農業規範、もしくは農業生産工程管理などに訳されている。FAO(国連食糧農業機関)によるGAPの定義では「農業生産の環境的、経済的及び社会的な持続性に向けた取組であり、結果として安全で品質の良い食用及び非食用の農産物をもたらすものである」とされている。簡単に言うと、食べる人の安全(食品安全)、作る人の安全(労働安全)、地球環境の安全(環境保全)であり、持続可能な農業に向けた取り組みの第1歩にも繋がる。

 その中でもGLOBAL G.A.Pは、130カ国以上で取得されている事実上の世界基準と認識され、第三者機関が審査を行う食品安全規格であり、ドイツに本部を置く非営利団体FoodPLUSが運営。GFSI(グローバル・フード・セーフティ・イニシアティブ)でベンチマークされた承認規格の一つであり、輸出やグローバルにビジネスを進める上では非常に重要な認証だと言われている。特に2005年以降は、欧州の小売店の多くがこの基準をクリアした産品以外は店頭に並べない方針を打ち出した経緯もあり普及が急激に広まった。

 面白い点としては、日本ではロゴマークを添付しないと市場では普及しないと思われる方も多いが、おそらく欧州では当然のこととして基準をクリアした製品を取り扱うだけであって、言わば調達基準であり特にPRとして認証を活用しているわけではない。

 現在、GLOBALG.A.P.の認証対象品目は、農作物(青果物、穀物、コーヒー、茶、花き)、家畜(牛、羊、豚、酪農、家きん)、水産養殖などである。さらにGLOBALG.A.P.の各国支部である国別技術作業部会(NTWG)が日本では存在し、日本独自の地域性を反映出来るよう、国内の事情に応じた解釈ガイドライン策定なども行われており、またGLOBALG.A.P.協議会が普及も含めたさまざまな役割を担っている。

 それから農林水産省でも2010年4月にGAPの共通の基盤づくりガイドラインを公表しているが、一次産品(農・水・畜産物)のGAPを通じた生産者自らの安全と持続的な生産管理の実践を目指すと同時に、GLOBAL G.A.Pが求められた場合の輸出促進のために、施策や協議会の設立等、今年度はさらに具体的な動きが見られている。日本においては他にも多様なGAPが存在し、情報が交錯しているようなので、次回はその内容について見ていきたいと思う。

 農業の従事者が次世代にその知恵をどのように残していくのか。認証は管理方法の構築や文書化、教育の徹底、農薬の使用を低減し環境にも配慮した、持続可能な農業の促進に向けた、一つのツールにすぎない。農業従事者にとっても小売り業者にとっても、より安心安全な製品が消費者に届けられ、人も地球にとってもより良い食と農業の在り方が今求められている。

写真はGLOBALG.A.P.協議会の一部メンバー(左から今瀧氏、横田氏、福永氏、重野氏)

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞 2015年7月22日付掲載

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