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2016/12/20

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~④ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 倫理的消費。エシカル消費とも言われるが、消費の在り方について消費者庁でも研究会にて議論が進んでおり、今後の動向が注目されつつあるが、一方でエシカル消費分析の認知度調査で衝撃的な結果が出ている。2009年よりエシカル消費について調査しているデルフィスの細田琢氏によると、2015年9月の結果では、興味があるが45・4%、実践しているは19・9%であり緩やかに低下しているという。

 エシカルの定義がはっきりしない、ということもあるかもしれない。イメージとして、フェアトレードやオーガニックが思い浮かぶ方も少なくないだろう。また、環境問題や貧困、児童労働をなくそうと活動している方や団体への寄付や取り組みなどもある。エコだけではなく社会的問題についても触れ、環境や社会に配慮した倫理的な行動について、その範囲は大きく、捉え方もさまざまである。

 エシカルラベルについてはどうであろうか。エコマーク・環境マークや認証ラベルなど、エシカルにまつわるラベルはさまざまであるが、これが唯一のエシカルラベルというものではなく、その意味合いや示す背景も違い、何を持ってエコなのか、エシカルなのか、森や海、地域社会や人々の人権、動物愛護など含まれる要素も多岐にわたる。

 さらに注目すべき点は、それぞれのラベル・マークは誰が保有団体なのか。何を基準にしているのか。そのラベルを使うためにはどのようなプロセスが必要なのか。マークを買うのか、審査の結果入手することができるのか、企業のイメージロゴなのか、同じ分野で存在するラベルとの違い、また信頼性・透明性と客観的な評価などなど、導入する際には把握しておいた方が良いポイントもいくつかある。

 また導入後の効果については、それぞれの普及啓蒙に携わっている方々や団体、また取得企業も広報や宣伝をしているが、なかなかまだ認知度が上がらない、という声がある。消費者に知ってもらい買っていただく必要があるが、思ったより売り上げにつながらないと、すぐに諦めてしまうのももったいなく、バランスをどう維持していくのかが求められる。

 そもそもラベルは一つのツールに過ぎなく、企業が当たり前のようにエシカルな製品を社会に提供していくためにも、エシカルな視点でのデザインや商品設計の企画・その原料が持続可能な形で調達できるのか、問題が潜んでいないかなど、事業活動の起点から考え、その中でエシカルラベルを利用すれば良いのではないか。企業のエシカル活動の裏付けとして活用しながら、必要に応じて広く見せていく手法もある。

 特に大量に生産する必要があるものや、海外からの輸入に依存しなければならない製品については、原料・生産における環境社会的リスクがないかを把握する手段として、ラベルや認証を活用することで、すべてのチェーンを一つ一つ遡る手間も省ける。

 ラベルは自社の取り組みや製品の価値について、見えないストーリーを語る一つの表現方法でもある。逆に個性的なストーリーとポリシーがあり、モノづくり全てが見える形でデザインや製品を提供しているブランドや伝統工芸など、特にラベルを必要としないものもあるだろう。いずれにしても分かりやすい情報を基に、エシカルに興味を持ち、何かを買うときなどエシカル視点で選択したり、そのような活動に参加したいと思った時に、行動に移すことができるための道筋が日本ではもっと必要である。

 未来にとっても必要なビジネスの在り方とその継続性をどれだけ担保できるのか。今エシカルラベルとしてどのようなものが存在し、企業がどのように取り入れていけば売り上げにも貢献し、自然も人も関係するステークホルダー全てが大切なものを搾取されることなく、幸せへと繋がることができるのか。そして、その信頼性の客観的根拠を踏まえて、興味を持った費者が、選択する際に納得できることが必要である。誰もが知る機会とエシカルな取り組みが当然のこととして社会に浸透した時、エシカルラベルはその責務を終えるのかもしれない。

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞2015年10月28日付掲載

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