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2016/12/28

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~ ⑤

fukuhara
エシカル日本

 日本人はよく魚を食べる国民であり、そして多くの種のいのちをさまざまな形でいただいている。その魚に関連する認証で、海のエコラベルとも呼ばれるMSC(Marin Stewardship Council:海洋管理協議会)認証がある。

 1997年に設立された国際的な非営利団体(NPO)であり、本部はイギリスのロンドン。「世界の海が生命に溢れ、現在と将来の世代にわたって水産物の供給が確保されること」をビジョンとしており、ロンドンオリンピックにおいても重要視された認証である。
 さらに、水産物認証とエコラベル制度において、最優良事例ガイドラインを満たしているものであり、以下の全ての国際基準と一致しているのはMSCだけだという。

 ・ 責任ある漁業のための行動規範(国連FAO)
 ・ 水産物エコラベルのためのガイドライン(国連FAO)
 ・ 社会環境基準設定のための適正実施規範(ISEAL)
 ・ 世界貿易機関の貿易の技術的障壁に関する協定

 食も含めて、私たちの消費の在り方が議論されることが多くなったが、いうまでもなくとても重要であり、アジアを中心に認証を広げる必要があるだろう。

 マーケットを広げるためには、企業の積極的な取り組みが重要である。MSC日本事務所の石井幸造氏は、「消費者の認知度が低いからやらない、のではなく、売り手側からのアプローチが必要。特に日本は小売りが多い国なので、一つでも多くのところで認証製品を取り扱ってほしい。その為に今MSCとして特に力を入れていることは、①国内の認証漁業を増やす②ラベル付き製品の取り扱い企業を増やす③一般の方の認知度を上げる――ことです」と語る。

MSC石井様.jpg

 当然、日本でも認証製品に取り組んでいる企業はあり、スケソウダラ、マダラ、甘海老、サーモン、カレイ、ホタテなどの約100製品が認証製品として販売されている。しかし認証製品の比率はまだ少ないことから、今後は消費者に認証製品を積極的に選択してもらえるよう、さらに認証製品を増やしていく必要があるという。

 海外ではどうであろうか。特にドイツ、オランダ、イギリスがMSC認証の普及が進んでいる。ヨーロッパは食べる魚の種類がそれほど多くないことから、取り扱いを認証製品に切り替えるのが比較的簡単なことが理由の一つであり、日本はたくさんの魚種を食べるので、なかなか難しいようだ。

 現在、企業の調達方針として、具体的な目標を挙げている企業にイオングループがあり、水産物の10%をMSC・ASC製品にすると宣言している。IKEAも全店舗で販売される水産物をすべてMSC・ASC認証製品に切り替えるとプレスリリースをしている。また、メニューにロゴを付けることも可能なので、パークハイアット東京でも取り組まれているように、食べる場所(レストランなど)で提供してもらうことで、認知が向上するのではという期待も持たれている。

 漁場に伺うと、海を愛し、孤高のプライドを持ちながら従事されている方々に感銘する。どの世界もそうであろうが、特に島国でさまざまな特色を持った海と魚たち、その恩恵を活かした料理に舌鼓を打ちながら、この贅沢な時と海と産物にいつまであやかることができるだろうか。

 「いつまでもあると思うな親と金」ということわざがあるが、私はよく両親に「いつまでもあると思うな親と金と食べ物だ」と言われていた。無くなるから早く食べろという意味もあろうが、いつまでもその食べ物、つまり自然の産物が永劫食べられるわけではない、どれだけ貴重なものか、人間がどんなに努力しても自然が生み出した生きものには敵わない、ということを肝に銘じよということだと認識している。私たちがその恩恵を子供たちに食べさせ続けられるのか、今大事な時代に突入している。

写真はMSC認証ロゴ(上)と石井幸造氏(下)


環境新聞2015年11月25日付掲載

 

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