エシカル日本 > 国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~ ⑥ 山口 真奈美
連載
2017/01/05

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~ ⑥ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

日本産の農林水産物を国際認証に対応させる取り組みが着実に広がりつつある。

 農林水産物に関連する国際認証としては、海産物では海のエコラベルであるMSCや養殖のASC、林産物ではFSC、農産物でもGLOBALG.A.P.などがある。これらの国際認証に日本の恵みを対応させようとするとさまざまな課題をクリアする必要があるのだが、それとは別に日本固有の認証制度を推進しようとする動きが一部にあるなど認証をめぐる日本国内の議論は混沌としたものとなっている。

 国際認証は当然の事ながら国際取引も前提としており、世界共通で適用される基準を基本としている。そのため、個々に見てみると、日本の現状にそぐわない部分も存在し、審査の方法も含めて課題も多いため、改善に向けて議論し提案する必要のあるものがほとんどである。

 例えば、オーガニック繊維の認証であるGOTS(Global Organic Textile Standard)では、日本国内において認証済みの染料・助剤の入手が現在困難な状態にある。使用する染料・助剤は染料メーカーによって事前にポジティブリストへの登録を行う必要があるのだが、日本独自の色合いを出す染料は日本国内のみをターゲットにしていることも多いため、提供する染料メーカーにとっては自社製品をわざわざ登録するメリットがあるのかという議論にもなりなかなか進まない。また、日本の伝統的な染料や手法のなかには定型化して分析、登録するといった枠組みになじまないものも多いため、認証取得者は日々模索し、関係者と何度も話し合いの場を設け、いかに日本でも適応できるものにしていくのか取り組み途中である。

 また、国際認証は世界中で共通基準を使用するため、同じものなら価格の安い輸入品が国内市場を淘汰してしまうというのではないかという議論もあるが、実際は取引においても最低限の基準として扱われ、これらをベースとして国や企業が独自の基準で取引先や購買先の選定を行っているケースも多い。

 日本の素晴らしい木材や水産物、農産物などの自給率が決して高くなく、輸入品に押されがちな分野でも、日本産が国際的な認証を取得することにより、さまざまな意味で確かなものであるという主張が社会に対してもできるようになる。その上で日本産の独自性や品質の高さを海外に対して訴求することはメリットにも繋がるのではなかろうか。しかし、日本の取得者の多くはサプライチェーンのCoC(Chain-of-Custody)認証であり、原材料の供給元となる森や海自体、農地の認証はまだまだ普及の必要がある。

 現在、気候の変動は激しく、収穫量もまた合わせるかのように変動している。この状況のなかで、自然の恩恵が次世代まであり、海外からの原料や製品も永続的に輸入し続けられる保証はない。認証にはサステナブル、エシカルなど環境や社会に配慮した、地球にとっても人々にとっても持続可能であり続けるために果たすべき役割を担う必要がある。

 自然や生態系が繋がっているのと同じように、業界や分野を超えて世界共通の取り組みが求められており、決して日本国内だけの問題ではない。そして私たちの生活を支える各産業で今課題になっていることを改めて浮き彫りにし、改善に向けて何ができるのか、そのチェックリストとなるような機能を各分野の認証基準を参考にしながら進めていくと、見えてくる事があるように思う。

 そんな中で、県や組合全体といったレベルでの取り組みがなされ始めている。宮城県では漁業自体が国際的に通用するかの確認がなされ、日本の素晴らしい水産物を国内全体、また世界に向けて発信していけるように意識しながら前向きな議論がなされている。

 どのようにジャパンクオリティーとサステナビリティを両立させながら、日本産の農林水産物が世界基準から見ても確かなものだということを発信していくのか。そのターニングポイントに私たちはいるのではなかろうか。

写真は、宮城県での漁業に関わる取り組みの風景(著者提供)

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞2016年2月24日付掲載

Facebookで更新情報をチェック!

関連記事