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2017/01/24

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~⑦ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 エシカル。まだこの単語を知らない方々が多い中で、衣食住やライフスタイルを通じて、自然との繋がりやオーガニック的ライフスタイルを心地よく取り入れていく女性や若者が増え始めている。どのような場所や環境、人々で生産されているかを知ることで、消費者の立場でも「安い」だけではなく、場所や生産履歴、作り手が誰かなど、少しずつ違う価値軸やエシカルな視点での選択の広がりが、新たな未来を創造していくきっかけになるかもしれない。

 エシカルや倫理的消費など、各地域でも少しずつ広がりが見られ、徳島県では「明日を選ぶ消費~食でつながる多様ないのち・健康・未来~」というフォーラムが一般消費者向けに開催されたが、「ボア・デ・デュポン」オーナーシェフの木場巳雄氏や環境保全型農業を実践されている皆様の事例紹介などがあり、「未来につながるエシカル選択」というテーマで私もお話の機会をいただいた。

 学生からご老人の一般の方々はもちろんのこと、環境保全型農業やこだわり農産物を販売されている方も多く、次の日には事例紹介された方々の現場をバスで回る「いのち育む現場の見学試食会」が行われた。昼食も各現場で生産された食品をベースに、素敵なレストランで食事ができるとあり、主婦の方々や学生も楽しみながら食の大切さ、生物多様性との繋がり、そしてエシカルな視点について情報交換される姿が印象的で、教育の場でも取り入れられていく機運を感じた。

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 徳島県とともに同フォーラムを主催するNPO法人徳島保全生物学研究会理事の稲飯幸代氏によると、
『現在、多くの種類の生き物が減少し、種の多様性が失われている一方で、私たちの生活は多くの生き物によって支えられています。また、生物の多様性が失われることは、私たちの生活のみならず、消失した生き物に関連した生態系へのダメージが生じます。実はこのことは、私たちの身近なところでも起こっていますが、生き物がそれまで生息生育してきた自然環境が失われていることに気付いていない人々も多いと考えられます。数年来、生物多様性の重要性について普及啓発を行ってきましたが、聞きなれない言葉の難しさや日常的でない内容の理解しにくさ、生物多様性を向上させるには具体的にどうすればいいのかという行動での課題もあるように思われます。

 今回の取り組みの目的でもあった、これまでの環境から生物多様性を普及啓発するのではなく〝生物多様性に配慮した商品を購入する行動が生物多様性の保全につながる〟ことを示すことができ、「こう行動すれば守れる」というのはとてもわかりやすく、人々が受け入れやすいと考えられます。とても関心を示して〝自社でも是非取り組んでいきたい〟〝今までの事業活動に自信をもった〟とのお声もいただきました。今後も徳島県といえば「エシカル消費の県」といわれるように取り組んでいければと思います』とコメントをいただいた。

 エシカルなアイテムを生産・販売・そして消費者が選択するまで、また、認証やラベルとの関連について情報の整理や集約がなされていないのが現状である。先日国際標準やその認証関係者で集まり、共通で持つ課題について情報交換を行ったが、エシカルの環を広げていくには、業界の枠を超えて共に進んでいかなくては、自然破壊や生物多様性の喪失のスピードには追い付けないだろう。「その選択したアイテムの背景に、ストーリーや美学が見えますか?」自他共にそんな問いが続く日々である。

写真は上から、フォーラムで事例紹介された農場の見学会、各現場で生産された食品をベースにした朝食がふるまわれた

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞2016年3月23日付掲載

 

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