国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~⑮ 山口 真奈美
fukuhara
普段お客様のお話を伺いながら、当然ながら認証の問題点や限界について痛感することも多々ある。
認証や誰かがいちいち確認する必要のない世界だったら?認証は全てを証明しているわけではない。完全な世界でもない。だったら意味あるのか?
そんな問いも度々あったりする。そして、いつまでも認証に頼っていいのかと思う反面、その分野で認証がなかったら、どのように事業活動や製品の持続可能性・透明性を証明できるのだろうかという疑問も残る。
おそらく性善説から見ると、なんでいちいち証明する必要がある?ともなるが、エシカルなアイテムを選びたいと思う消費者にとっては、何を物差しに選んだら良いのか悩むだろう。
いつもどこかで地球の現場・モノづくりの背景で起こっている非倫理的な問題に悲しみ、なぜそうなってしまうのかと疑問が浮かぶ。そして自分も含めて何気ない消費者・生活している多くの人々、つまり生活者の行動が集まり大きな力となって、そんな予想していなかった社会の支えに、知らずしらず荷担しているのだろう。
この連載を通じて、認証のその先へ想いを馳せながら、結局東京で暮らしている自分の力で、農業を自分で営んでいるわけでもなく、自分が例えば1年分、家族やお世話になっている関係者を支えるぐらいの食べ物を育てているわけではない。そして毎日同じ洋服ではなく、洗濯された清潔まとな洋服に身を纏い、その洗濯や用意は?その洋服そのものを作っているのは誰?など、考え始めると、日常の全てのものが誰かの真摯な想いと愛情が注がれた結晶に、どれだけお世話になっていることか…。
理論に裏付けされているわけではないかもしれない、そんな世界に私たちは選択の基準を持ちながら生活している。
認証・ラベルは興味のある方はともかく、一般的に覚えるのも一苦労であろう。学校の授業でその意義や見方は学ぶ必要があるかもしれないが、暗記型で一時的に記憶の引き出しの一つに入っただけでは、いつか埋もれてしまうが、なぜそれが必要だったのか、それを問うのが今の時代なのではなかろうか。
世界の流れを感じる部分として、EUやアメリカ、先進国と言われる諸国のみならず、例えば中国でもオーガニックなどの第3者証明を求め、なければ取引が困難になりつつあるようだ。日本では必ずしも求められなかった状況が、アジアでも広がりつつある。日本がリードする社会と、欧米に左右される状況から、違った第3の力にどれだけ対応していけるのだろうか。日本ではあるはずない、と予想していた要望に、どれだけの答えを出していけるか。
認証を一部改めて羅列すると、繊維分野のオーガニック繊維(GOTS:Global Organic TextileStandard)、オーガニックコットン(GOTS・OCS:Organic Content Standard)、リサイクル(GRS:Global RecycleStandard)、動物福祉にも関わるダウン(RDS:Responsible Down Standard)やウール(RWS:ResponsibleWool Standard)、フェアトレード(国際フェアトレード認証・WFTO:World Fair Trade Organization等)。
有機農業など農業分野では、オーガニックの有機JAS(日本)・EU Organic(EU)・USDA/NOP(アメリカ)、農業全般(GLOBAL G.A.P.)、レインフォレストアライアンスやUTZCERTIFIED Coffee、水産物の漁業(MSC:Marine Stewardship Council)、養殖(ASC:AquacultureStewardship Council)、森林認証のFSC(Forest StewardshipCouncil)、PEFC(Programme for theEndorsement of Forestertification Schemes)、緑の循環認証会議(SGEC:Sustainable Green Ecosystem Council)、食品・化粧品・せっけん洗剤等トイレタリーの原料でもあるパーム油(RSPO:Roundtable on SustainablePalm Oil)など、挙げればきりがないが、それぞれ重要視している世界があるのは確かである。
一見理解し難い認証やラベルの世界。でも一つでも覗いてみると、今地球の現場で起こっているさまざまな状況に目をそらして、本当の幸せの社会に生きられるだろうか。犠牲にしたり、悲しい想いをしない世界と未来のために、認証をきっかけにして新たな社会軸を創造していくのは今しかない。
やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor
環境新聞2016年11月23日付掲載