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日本エシカル推進協議会
2018/07/25

「エシカルを都政に刻みたい」~エシカルサミット開催 山本良一氏と小池都知事が対談

fukuhara
エシカル日本

 

 日本エシカル推進協議会(会長=中原秀樹東京都市大学名誉教授)は4~6日、東京都港区の品川プリンスホテルでエシカルサミット「エシカル2018」を開催し、エシカル2018実行委員長の山本良一氏(同協議会名誉会長、東京大学名誉教授、写真左)は初日、「エシカル都市TOKYOの実現を目指して」をテーマに、小池百合子東京都知事と対談した。以下、概要を紹介する。


 山本氏:環境対策に関して、日本は世界の動きに乗り遅れているのではないか。
 小池氏:環境にはいろいろな分野があり、かかわる主体が多様であり、その中では個々人の意識や振る舞いは決して遅れていないと考えている。このたびのサッカーのワールドカップでも、サポーターの皆さんがごみ拾いをして帰った。選手の皆さんがロッカールームをピカピカにして帰った。残念ながら試合には負けたけれども、そういう意識の面で、日本人にこうした取り組みが定着していることは誇るべきことだと思う。
 私はいつも、『心・技・体』の3つが揃うと物事がうまくいくと考えており、『心』は国民の意識。『技』は技術。『体』は制度で、日本は、この制度を整えるということに非常に時間がかかる。これが根本(の問題)で、私は決して遅れているとは思わない。時には世界の先進をいっていると思うが、全体としてそのアピール力(に欠け)、国民運動的に皆で取り組もうという流れにはなっていない。その意味で今回のサミットには意味がある。

東京五輪の持続可能性配慮は当然
 山本氏:昨今、ESG投資が拡大している。グリーンボンド(環境債)も急速に増加しており、報道によると、今年前半に世界で6兆6千億円に達したという。知事は昨年早々にグリーンボンドを提案して話題になったが、それはどのような考えからか。
 小池氏:一昨年、トライアルの形で100億円分の個人向けボンドを発行した。即日完売だった。それをベースに今年度、自治体として100億円分を発行したところ、約4倍の競争率になった。
 目的は、もちろん環境を良くするということ。今回調達した資金は、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた環境改善に使われる。
 私は、かねてよりぜひ金融と環境が調和するのは良いことではと考えていた。金融関係の方にお手伝いいただき、知事になったときにここはチャンスだと思って始めた。環境大臣だった頃(金融界の関心が低かったこと)を振り返ると、今、金融界の皆さんがSDGs(持続可能な開発目標)のバッジを付けているのを見て感慨深い思いだ。
 山本氏: 20年東京五輪が目前に迫る中、ロンドンやリオデジャネイロに続いて、東京でもエシカル・サステナブルな取り組みの実現が期待されている。アニマルウェルフェアやオーガニックといった取り組みは東京大会で広がるのか。
 また、新国立競技場の建設で、熱帯で違法に伐採された森林の合板がコンクリートの型枠として使用されていると、NGOから批判を浴びている。こうした問題についてどのように考えているか。
 小池氏:合法木材の利用については、国会議員時代から一生懸命に広報活動をしてきた。国立競技場については、都の所管ではないが、当然、オリンピックのサステナビリティを示す重要なポイントだと思っている。
 20年東京五輪では、選手村で持続可能性に配慮した調達をする。食材については、安全で法令に適合しているのはもちろん、アニマルウェルフェアに配慮する。オーガニックにもできるだけ対応した食材を利用する。持続可能性に配慮した取り組みを進めるのは当然の話だ。

政策に「地球の限界」考慮を
 山本氏:我々は、あらゆる場面で「地球の限界」を考えないといけない。英エコノミスト、ケイト・ラワース氏の「ドーナツ経済」の理論によると、社会の中のさまざまな問題がある限界を超えると、問題が深刻化してしまう。地球環境の持続可能性、また、人類社会の安定性の両面から問題を考えないといけない。
 フィンランドは、地球の限界の内側で社会のシステムを高めるよう目標を設定している。東京都もそのように全体の目標を設定し、対策を考えてもらいたい。
 また、私は、20年東京五輪に向けて、東京には、「エシカルタウン(都市)宣言」をしてもらえればと考えている。ロンドンやリオはフェアトレードタウンの認定を受けているが、世界のどの都市もまだエシカルタウンを宣言していない。ぜひ東京が先陣を切ってもらいたい。
 小池氏:エシカルという言葉を議会で使っている自治体がどれぐらいあるのか承知していないが、エシカルというキーワードをこれから都政の中に刻んでいきたい。
 また、東京都は、世界大都市気候先導グループ(C40)に加盟している。これからは大都市の時代であり、大都市に環境問題が集積する。大都市の環境政策が、全体にプラスになると考えている。
 目標については、東京として、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を、00年比で30%削減。食品ロスは30年までに半減するなど、国を超える目標を定めている。
 クールビズも普及するのに10年かかった。エシカルも、次の10年でそうなるよう努力できれば。日本には、十分その素地がある。
 山本氏:国民の間にも、このままじゃいけないのではという意識が出てきているように思う。小池知事に、「心・技・体」の「体」の部分で、国際社会を牽引していただきたい。

 

環境新聞2018年7月11日付に掲載

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