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2017/07/20

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~ ⑯ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 持続可能な社会。公害問題から日本はさまざまな経験と知恵や努力によって、環境への配慮やビジネスを通じた社会貢献を実施してきた。その経験値を活かしながら、新興国をはじめ環境汚染や災害・天災からの復興など、環境社会的問題解決に向けて少しでも貢献してきたことは紛れもない事実である。それは、人々のどうしようもなく助けたい、この状況を解決したい、という思いから突き動かされて活動へと結びついている結晶である。

 一方で、ビジネスに繋がるかどうかという軸で動いてきたものも当然あるだろう。さらに、日本企業が少なからず諸外国や地球全体への環境破壊や、社会的問題に加担してしまっていることも否めない。顔が見える関係性とはほど遠い、気が遠くなるような長いサプライチェーンを経てでき上がるサービスや製品たち。その恩恵の裏でどれだけの涙があっただろうか。

 おそらく声にもせず、涙も見せず、いや、泣くことを通り越して、ただひたすら目の前の事実に巻き込まれ翻弄されつつも、半ばあきらめの境地で、ただ日々をやり過ごす人々がいるかもしれない。特に現地で目にする光景は、人々も言葉にしない自然達も何がしか声にならない声をあげていると感じる瞬間がある。

 これまで国際的に運用されている認証、その中でも、原材料調達からサプライチェーン・バリューチェーンを通じて、環境や社会に配慮した、生物多様性や持続可能な原材料の在り方に注目しつつ、この連載をさせていただいているが、今も解決していかなくてはならない課題は山積である。

 その各業界固有の問題から、複雑な繋がりで連携し合わなくてはならない部分まで、個々の紹介で終わってしまうのがもったいないぐらい、その世界の関係者は多様で、次々と発生する課題や事実に直面しつつも、笑顔で希望を持って活動している人々がいる。そして、認証は当然ながら単純に基準に決められた内容を、冷静に審査に判定していくものでもあるが、その業界は多岐にわたり、複雑過ぎると感じることもあるだろう。

 2020年までの日本の動きに認証は少なからず関係する。東京2020組織委員会では、「持続可能性に配慮した調達コード(案)」をとりまとめ、先日意見募集を終えたところであり、どのような調達コードになるのか注目されている。この中では、「東京2020組織委員会が調達する全ての物品・サービス等に共通して適用される基準や運用方法等を定めるとともに、持続可能性に配慮した農産物・畜産物・水産物の調達基準についても定めること」としている。

 日本の市場を盛り上げながら、世界にも通用する持続可能に配慮した調達。このコードはあくまで一部に過ぎないが、今後企業も政府も日本市場全体が、そういった配慮の視点を持つ必要性が示唆されることだろう。そして、その先へと想いを馳せながら、認証のような、結局人間が行うことを人間が確認することに、それ以上でも以下でもない事実がある。

 そして、エシカル(倫理的・道徳的)な活動を求めるのは人間社会だからであり、何かを頼りに律しながら、誰もが幸せになれる社会への仕組みづくりの一環として活用していってもらえれば幸いである。この連載をさせて頂き、環境新聞様や読者、協力頂いた方々にとても感謝している。今回で第2部を終了し、次回からは、美学を持って活動されている人々にも焦点を当てながら、皆様にお目にかかれるのを楽しみにしている。そして、今後も何気ない日常が実はとても貴重で素敵なのだと、失ってから気づく前に、今この瞬間から持続可能な社会に向けて皆様と動き出せたらと思う。(第2部終わり)

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞2017年1月4日付掲載

 

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