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連載
2015/08/05

【新連載】ソーシャルコンシェルジュのエシカル手帖① ~エシカルの現在・過去・未来 林民子

fukuhara
エシカル日本

 チベット族・東北支援のニットブランド「SHOKAY (ショーケイ)www.shokay.jp

  環境新聞読者の皆様、はじめまして!ここ数年日本でも浸透しつつある、「エシカル」や「エシカル消費」という言葉。意識の高い環境新聞の読者の皆様にとっては、既になじみのある言葉かと思います。
 エシカルは「倫理的」とよく訳されますが、「人間が持つ良心から発生した、多くの人が正しいと思っていること」ともいえます。そして、「エシカル消費」とは、地球環境や社会貢献などに配慮したモノやサービスを積極的に消費する行動です。
 このエシカルな暮らし方や考え方を日本に広めようと、他に先駆けて、種まきをしてきたものにとって、昨今の広がりはとても嬉しく思っています。
 私が、「未来のために、人々のライフスタイルや価値観を変えるような仕事がしたい」という思いから海外ブランドのPRの仕事を辞め、社会貢献的なビジネスを準備していた2006年。当時「エコ」や「ロハス」という言葉は浸透していましたが、環境だけでなく社会や人道的な問題まで包括した言葉はないかと海外をリサーチし、イギリスで出会ったのが、この「エシカル」という言葉でした。そして翌07年にNPOを設立。以来、チベット族を支援するフェアトレードブランドの運営やイベントの開催、執筆や講演などを通して、エシカルな衣食住の提案を行ってきました。

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 私がNPOを立ち上げた頃、 “エシカル”という言葉を出しても、理解を示す人はほとんど皆無でしたが、ここ数年、エシカル消費に関心を示す人たちが増えているのを実感しますし、またそれに呼応し、エシカル志向な人向けのモノやサービスも増えています。
 良い流れだとは思うのですが、“エシカル”が、“エコ”や“ロハス”の次に来る、流行のマーケティング・ワードと表面的にしか捉えていない企業も出てきているようですし、消費者の中にも、企業の生産プロセスや真の社会的インパクトを見極めずに、見せかけの“エシカル・ウォッシュ”キャンペーン、つまり“偽エシカル”に惑わされている人たちも少なくはありません。

 例えば、よく「自然にもお肌にも優しいオーガニックコスメ」とPRする商品がありますが、本当にそうなのでしょうか?「トレーサビリティは?(追跡可能)か?」「そもそもオーガニックな成分はどれくらい入っているのか?」。オーガニックな成分が1%でも「オーガニック」とうたっている商品もあります。
 一方、エシカルという言葉自体は、広まりつつありますが、実際にエシカル消費を実行している人は、さまざまなデータを見ても一握り。その理由は、エシカルなモノやサービスの選択肢が少なく、クオリティや価格についても市場競争力が弱い発展途上の状態。逆をいえば、まだまだ広がるのりしろがあるということ。
 海外から日本に入ってきた「エシカル」という言葉。実はこの考え方、近江商人の“三方よし”や“お互い様”、そして“もったいない”など、元々日本人がもっているDNAとも言えます。自然、人、社会を慮る(おもんばかる)日本人の精神性を呼び覚ますスイッチが入れば、日本がこの分野で世界をリードすることもできるのではないでしょうか?
 この連載を通じて、エシカルなライフスタイルに関する国内外の最新情報を紹介していきます。読者の皆さんの暮らしやビジネスのヒントになれば幸いです。どうぞ1年おつきあいください。

はやし・たみこ  NPO法人ソーシャル コンシェルジュ/SHOKAYジャパンオフィス 代表

環境新聞8月5日付掲載

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