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2016/12/08

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~ ③ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

   責任ある羽毛の基準、RDS(Responsible Down Standard)という認証があるのをご存知だろうか。日本ではまだあまり知られていないと思われる。

 繊維の分野では、リサイクルや先駆的な技術で日本は世界を牽引しているが、世界市場における認証については、世界のアウトドア業界がオーガニックコットンをはじめ、これまでも新たな動きを社会に提供してきた。さらにその原材料の一つに動物からの原料についても注目されつつある。
 その背景として、非人道的な環境で飼育されたアヒルやガチョウなどの羽毛を、詰め物として使用することを控えなければならないのではという指摘が多く上がった。さらに、動物福祉(Animal Welfare)に対する消費者の関心とアウトドアメーカー内部からの意識変化もあり、アメリカに本部をおくNPOのTE(Textile Exchange)、THE NORTH FACE、そしてControl Unionが連携し基準を開発して作成されたのがRDSである。

 自然環境や働く人々だけでなく、動物福祉に関しても注目がされ始めているということだろう。エシカル(倫理的な)視点に通じる話であり、RDS基準の最終的な目的は、「ダウンを利用する企業にダウンが生産・提供される過程で、非倫理的な環境で加工されていなかったことを証明するとともに、トレーサビリティの審査を通して保証すること」となっている。こちらも第三者認証であり、独立した第三者認証機関での農場から、屠殺施設や縫製工場などすべての羽毛製品のサプライチェーンにて審査の後、認証書が発行される。現在特に農場で取得率の高い地域は中国、アメリカ、ハンガリー、ウクライナ、ベトナム等である。

 認証されたチェーンでは、①強制的に飼育され、生きたままの鳥から羽を強制的に採取していないか②飼育されている動物たちのための5つの条項を基本とする動物福祉③明確な追跡システムを介して確認されるサプライチェーンの透明性――が求められる。
 日本で新たな認証の話が出ると、時々なぜあえてそのようなことをしなくてはならないのかと、少々面倒な印象を持たれることもある。一方で、基準策定や提案に関わる方から見るマーケティングポイントとして、例えばこのRDSについていうと、羽を使用している製品については、①環境と倫理、動物福祉のための国際基準が皆無②スマートコンシューマーの台頭③生活の質が高くなるほど動物と環境への関心が高まる④環境を越えて動物福祉と倫理を考える会社としてのイメージのマーケティング――などが挙げられた。さらに、RWS(Responsible Wool Standard)というウールの基準の動きも出てきている。

 痛みや恐怖に苦しんだ上にある製品は、はたしてエシカルだと言えるだろうか。消費者も気持ちよく纏うことができるだろうか。また、中国をはじめ、新興国では生活水準の向上や富裕層の拡大により、ダウンを原料とする羽毛製品の需要は高まっている。リサイクルされた羽毛の広がりと共に、世界の需要と供給のバランスをどのように図っていくのか分岐点にあるとも言えよう。

 どの分野においても、信頼性のある情報の提供を行い、消費者に選択の責任を与える必要がある。バリューチェーン全体での持続可能性が求められる今、製造の責任だけではなく、販売側やさらには製品を選択する消費者自身が、自分たちの基準で選択を行うことで、新たなエシカルな社会の構築に繋がっていくのを願っている。

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞2015年9月30日付掲載

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