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2017/06/14

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~⑬ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 オーガニック・有機の世界が改めて広がりつつある。認証で言えば有機JASをはじめとする認証制度が国ベースで以前より存在しているが、その先に私達の暮らし・企業のあり方、そして地球環境に対してもどのような関わり方をしていくべきかを問う、一つのキーワードにオーガニック・有機という軸を持つ方々がいる。

 その方々や活動を取材されてきた山口タカ氏(下写真)は、現在、オーガニックビレッジジャパン(OVJ)の事務局長であり、オーガニックビジョンという雑誌を発行している。

 「オーガニックがいまや食だけでなく、衣食住に広く浸透し、ライフスタイルとして認識され始めている状況にもかかわらず、いまだ情報不足であることは、消費者の理解をいただくことも、マーケットの成長を促すことにも、マイナスでしかありません」とOVJでもその背景を伝えている。そんな中、オーガニックの業界紙として新たに誕生し、食育やエシカルをはじめさまざまなキーワードを繋げながら発信しつつ、セミナーなども通じて繋げる仕事をされているタカ氏は、温和な語り口調で、しかし危機感を持つべき現状に切り込んだ思いを語ってくれた。

 「そもそもオーガニックは持続可能性」。持続可能に関する議論は多くの分野でさまざまな見方がされるが、自然の恵みをそのまま命としていただくこの世界では、農業におけるオーガニックは必要不可欠な話題であろう。

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 タカ氏によると、今までは持続可能性やオーガニックと、食べ物に関しての問題意識はそもそも別々であったという。例えば、食育・環境・健康などと親和性はあるがオーガニックというキーワードはそこにはなく、気づきがなかった。しかし4、5年前からじわじわ広がってきた。それは単純な話でもある。

 どういう食べ物を食べたら良いのか、生活の中で添加物・農薬などが少ない方がいいのかも?という意識の変化が、子供の健康を願う母親をはじめとする女性たちから生まれたのが大きいだろう。美容やダイエット、さらにアレルギーやアトピーを持つ子供達がいれば、薬だけに頼らずに改善するための情報交換の中で、食べ物に関心を示す人も多く、食育からオーガニックに対して興味へと広がり、歩み始めてくれている方が増えているそうだ。

 また生産者の現場を覗いてみると、農家の方々は売る商品だけではなく、「自分のためにつくるから農薬は使わない、それを余るから配る」という物々交換や高齢者間の交流が存在している。それが日本の食文化であり実はオーガニックでもある。そして有機的な繋がりの中で祖先から私達は生活してきた。

 今有機というと認証が当然存在するが、第3者認証のインターナショナルな視点で認められるというレベルでモノ作りすることも大切であり、それを長年実践してきた先駆者達にとっては認証自体なんら難しいことでもないらしい。しかし、一定の基準をクリアしているという点では認証は「安全性は担保できるかもしれないが、安心感は担保できない。生産者の顔が見えると安心感につながる」という。

 オーガニックと食育のシンクタンクを目指しているOVJの活動や、オーガニック業界のさまざまな関係者が今の日本と農業を見直し、グローバルな視点を取り入れながら私達の命を支える食と地球、さまざまな視点での持続可能性とそのバランスを持った変革を進めて行くことが必要なのであろう。今農業分野は注目を浴びているが、一過性のブームに終わらせず、オーガニックがレガシーとして残っていく革命に期待している。

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞2016年9月28日付掲載

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