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2015/05/26

国際認証講座③ ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 私たちが普段着る洋服や使用するタオルなど、多くの綿製品が使われている一方で、このコットン栽培と繊維製品の製造過程には少なからず解決しなくてはならない問題が潜んでいる。綿花栽培では殺虫剤をはじめ落葉剤・除草剤などの農薬が多く使用されてきた歴史があるが、有害な農薬や過剰な化学肥料に起因する土壌や地下水の汚染による健康被害や、灌漑による地下水の枯渇、遺伝子組み換えの種の使用、農民の借金問題、子供たちが学校に通えず働くという児童労働の現実など、環境のみならず人権問題も含んでおり、それは糸から最終製品に至るまでの紡績・染色・縫製などの加工場においても同様である。


 このような問題解決の糸口の一つとしてオーガニックコットンの使用を進める企業が増えてきた。街中でもオーガニックの食材は体に優しいとか健康というイメージがあるようだが、オーガニックコットンの製品も以前よりレパートリーが増え、普及してきた印象がある。主に女性や若い世代にファンが多いようで、環境や社会に配慮したエシカルファッションの中でもよく取り上げられる。


 そもそもオーガニックコットンとは何か。一般的には農業におけるオーガニック農産物等の国や国際的な基準に従って約 3年以上管理を行い、認証機関によって認証を受けた農地で栽培された綿花のことをいう。EUやアメリカのUSDA―NOPなどのオーガニック(有機)農業の基準をクリアした農家がまず必要であり、そこから摘み取られた綿花を糸にしてから、最終製品までの加工流通過程では別の民間の基準が用いられる。民間の基準にはGOTSやOCSなどがあり、すべての段階で認証を受けた原料を使用しているかを追跡し、トレーサビリティーや含有率の確認することで何%オーガニック原料が使用されているかが判る仕組みとなっている。


 加工流通過程での認証には主にTextile Exchange(本部アメリカ)が保有するOCS(Organic Content Standard)と、本部がドイツにあるGOTS(Global Organic Textile Standard)などがある。トレーサビリティーの確保がどちらも中心であり、さらにGOTSでは使う染料・助剤の制限や工場での排水の基準など環境的側面、さらに長時間労働や児童労働がないかなども含めた社会的側面も審査基準に含まれる。一方OCSはトレーサビリティーの証明が主であり、カラフルでより高度なデザイン性を求められるモノづくりにおいては汎用性が高い。


 図に示しているように、オーガニックコットン認証の仕組みは、国や基準を策定している団体から認定を受けた認証機関が、独立した第三者の立場で農場や製造企業の審査の実務を行っているが、その内容はいかに基準に沿って生産されてきたかということである。つまり、オーガニックコットンについて少々誤解されがちな、アトピーが良くなるとか肌に優しいという証明がされているわけではなく、その背景に広がる環境・社会的側面を売る側も買う消費者も認識しておくことが大切かもしれない。認証は審査員が毎年現地を訪れ、言わば消費者の1人ひとりに代わって現場を確認し、その生産工程で抱える問題解決に向けて真摯に取り組んでいる事業者を認証することとも言えよう。


 品質やデザインもさることながら、その製品の付加価値として原材料に、オーガニックや環境に配慮したものを使用することで、遠い国の自然環境や従事する方々の生活、また日本のモノづくりの現場においても、そして消費者にとっても心地よい素敵な循環を生むような製品がもっと増えることを期待したい。
 
やまぐち・まなみ/Control Union Japan 代表取締役

環境新聞2014年7月23日付掲載

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