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2015/10/14

ソーシャルコンシェルジュのエシカル手帖③~あなたの服の本当の値段は? 林民子

fukuhara
エシカル日本

 『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』2015.11.14 (土) 渋谷アップリンクにて公開。日本公式サイト:http://unitedpeople.jp/truecost/

   今年5月に欧米で公開され話題となっていた、ファストファッション業界の裏側を描いたドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト』。ファッション界で大きな影響力を持つジャーナリストのルーシー・シーゲルや、アクティビストのリヴィア・ファース(俳優コリン・ファースの妻)が製作総指揮を務め、デザイナーのステラ・マッカートニーやピープルツリーのサフィア・ミニーなどが出演するこの映画。来月14日から日本でもいよいよ公開となります。
 ファストファッションとは、最新流行の服を低価格、かつ短いサイクルで販売するビジネスモデル、またはそうして売られる服のこと。トレンドのファッションを安く楽しむことができるのは確かに魅力的なこと。しかし、それが途上国の人々や地球環境の“犠牲”の上に成り立っているとしたら?
 映画のタイトルである「トゥルー・コスト(真の代償)」という意味のとおり、華やかなファッション業界の陰で、大きな代償が支払われていることを私たちに教えてくれる映画です。
 映画の冒頭にも登場する2013年4月のバングラデッシュの衣料品工場が入ったビルの倒壊事故。日本でも知られる欧米のファストファッションブランドの服がそこでたくさん作られていました。死者1千129人、重軽傷者2千300人、行方不明者500人。その大半が女性工員でした。
 現在、ファストファッションと呼ばれる服の多くは、バングラデシュで作られ、400万人以上の人が衣料品製造に関わっています。その80%が貧しい農村出身の10代後半から20代前半の女性といわれています。
 このビル倒壊事故の後、ファストファッションブランドにも、バングラデッシュ政府にも批判が相次ぎ、14年、衣料品産業労働者の最低賃金は月額3千タカ(約4千20円)から、5千300タカ(約7千102円)引き上げられています。それでもわずか7千円です。
 そんな不当に低い賃金ゆえに成り立つ安価な服は、大量に生産・販売され、消費者によって季節ごとに買い替えられ、そして大量に使い捨てられています。古着を資源ごみとして回収する取り組みが地域や企業によって行われていますが、改修された古着の内、リユース・リサイクルされるのは、全体の約10%。残りの約90%はごみとして焼却処分されるか埋立地に持っていかれるか。これは二酸化炭素の排出、地球温暖化にも影響していますよね。
 さらに“ごみ”問題の他にも、コットン栽培で使われる殺虫剤や農薬、さらに染色など製造過程で使われる有害化学物質が環境に与える問題も懸念されています。手袋やマスクを身に着けないで、作業する途上国の労働者たちの健康被害もまた深刻です。
 華やかなファッションの影で、いかに人々が劣悪な労働環境で働き、そしてファッションがいかに地球環境にも影響を与えているか、映画をご覧になる方たちは本当に驚かれるでしょうし、時として目を覆いたくなるかもしれません。しかし、これが華やかなファッションビジネスの一面、“不都合な真実”。それを変えることができるのは、消費者でもある皆さんです。皆さんが何を買うかで、企業が、そして遠く離れた途上国の人々の生活が変わります。
 価格やデザインだけでなく、モノに込められた本当の価値を買うことを大切に。

はやし・たみこ/NPO法人ソーシャル コンシェルジュ/SHOKAYジャパンオフィス 代表

10月14日付環境新聞掲載

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