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2015/11/11

ソーシャルコンシェルジュのエシカル手帖④~理想のサステナブル・タウンを求めて 林民子

fukuhara
エシカル日本

 先月27日に富山市で開催された、内閣府の「環境未来都市」構想推進協議会が主催する第5回「環境未来都市」構想推進国際フォーラムに参加してきました。
 「地方創生に向けたまちづくり」をテーマに、新しい環境価値や社会的価値、経済的価値を創出し、どう地域を活性化していくか?国内外のベスト・プラクティスが発表された今回のフォーラム。全国に23ある「環境モデル都市(そのうち11都市が環境未来都市)」で実施されている取り組みを知り、自分が住む町にも取り入れて欲しい!と思うものがたくさんありました。
 特に今回のフォーラムの開催都市、富山市はアイディア溢れる森雅志市長の強いリーダーシップのもと、さまざまな先進的なまちづくりが展開されています。


 富山市の「環境未来都市」政策の主軸は、鉄道をはじめとする公共交通を活性化させ、その沿線に居住、商業、文化等の都市の諸機能を集積させた「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」。少子超高齢化の未来を見据え、LRT(Light rail transitの略)と呼ばれる次世代交通システムを他県に先駆けて導入しています。例えば、車両の低床化、ホームのバリアフリー化、そして、低騒音化を可能にするもの。その上で、過度に車に依存したライフスタイルを見直し、“歩いて暮らせるまち”を実現しています。
 また、まちなか居住推進事業や公共交通沿線居住推進事業などの補助金制度を設け、市民がまちの中心地に住んでもらうよう促進、支援しています。さらに街中の空き地を農園や広場として再生・運営し、多様な世代が交流できるコミュニティガーデンなど、地域コミュニティ主体の交流空間の整備も行っています。


 なぜ富山市は、コンパクトシティ構想実現に力を注いでいるのか?市民の車利用が減ることは温室効果ガスの排出削減になるとともに、高齢者の積極的な外出機会が増えることで、町の中心が活性化します。コンパクト化によって道路の延長や整備、除雪、インフラ整備などのコストを抑えることもできます。都市の維持管理コストが抑えられることは、将来、市民の財政負担も抑えられることになります。 
 同市のコンパクトなまちづくりは海外でも高く評価され、2012年にOECD(経済協力開発機構)が選ぶコンパクトシティの世界の先進モデル5都市に選出されています。
 選ばれたのは豪・メルボルン、カナダ・バンクーバー、仏・パリ、米・ポートランド、そして富山市。「富山市は、東アジアにこれからいくつも出現する“人口減少高齢社会”で、コンパクトシティ戦略のモデルとなる」と称賛されています。
 さらに今年9月23日、「環境未来都市」や「環境モデル都市」としてこれまで取り組んできた実績や、将来的にエネルギーの効率の改善が期待できる点などが評価され、国連のSE4ALL (Sustainable Energy for All:万人のための持続可能なエネルギー)における「エネルギー効率改善都市」に日本国内で唯一選定されています。 


 コンパクトシティ戦略の他にも、循環型まちづくりの実現に向けたさまざまなリサイクル施設や環境学習施設を集約させた「エコタウン産業団地」を整備し、廃棄物の発生抑制やリサイクルの推進も図っているそうです。また、いま巷で話題のスーパーフードのひとつ、「えごまオイル」を市がバックアップ。耕作放棄地でエゴマの実や油の生産を拡大させ、加工、流通販売など一体的に推進しているのだとか。
 森雅志市長のプレゼンテーションで印象的だった“シビックプライド” というキーワード。
 富山市は、自分が住む街に愛着や誇りを抱ける「シビックプライド(Civic Pride)」の醸成を大切にした、サステナブルな戦略的まちづくりを積極的に行ってきた結果、今や日本国内だけでなく、世界的に高い評価を得ていることを知りました。
 さて、あなたはどれだけ“シビックプライド”を持っていますか?

はやし・たみこ/NPO法人ソーシャル コンシェルジュ/SHOKAYジャパンオフィス 代表

2015年11月11日付環境新聞掲載

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