東京五輪、低炭素戦略を推進~持続可能な運営へ初の方針
fukuhara東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は先月29日、持続可能に大会を運営するための方針を初めて公表し、温室効果ガス(GHG)の戦略的な管理方策、「ローカーボンマネジメント」を推進すると表明した。
昨年12月に「パリ協定」が採択されたことなどを受けて、同大会でも気候変動対策に取り組む必要があると指摘。高度な省エネルギー技術の導入を想定した目標を設定するとともに、GHG排出量を予測し、効果的な排出回避・削減策を行っていく。カーボンオフセットの利用も検討する。
今回作成されたのは、「持続可能性に配慮した運営計画」のフレームワークと、運営計画に基づく「持続可能性に配慮した調達コード」の基本原則。組織委員会の下に設置された専門家会議が昨年7月から非公開で検討してきた。12月末の計画策定を目指し、今後詳細を検討する。調達コードについても重要な物品・サービスから順次策定される見込みだ。
計画のフレームワークでは、2030年に向けた国連のグローバル目標、持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標のうち、同大会に関連が深い①気候変動(ローカーボンマネジメント)②資源管理③水・緑・生物多様性④人権・労働・公正な事業慣行等への配慮⑤参加・協働、情報発信――の5点を主要論点として提示。環境・社会・経済を含む持続可能性に配慮し、日本の独自性を意識した計画の作成を目指すとしている。
調達コードは大会で使用するすべての物品・サービスに対し、原材料調達から廃棄までのライフサイクルを通じた環境・社会への配慮を求める。今回示された基本原則により、コード策定には①どのように供給されているのか②どこから採り、何を使って作られているのか③サプライチェーンへの働きかけ④資源の有効活用――の4点が重視される。
同委員会持続可能性部長の田中丈夫氏(写真)は持続可能な2020年東京五輪の運営に向け、「サプライチェーンにおけるリスク管理の観点からは、トレーサビリティが1つの重要なポイント」との認識を示し、「複雑なサプライチェーンを経て製造・流通する製品・サービスもある中で、トレーサビリティの確保に向けてサプライヤーにどう取り組んでいただくかが大きな課題」と述べた。
また調達についても、「今後詳細のコードを検討する過程で、供給体制についても加味しながら検討する」としている。
運営計画とコード基本原則の作成には組織の社会的責任に関する国際規格、「ISO26000」や16年度中にも規格化が見込まれる調達の国際規格、「ISO20400」(案)を考慮。また過去大会の計画・コードやサステナビリティ報告書の国際基準、「GRIガイドライドライン」なども参考にされた。
2016年2月10日付環境新聞掲載