エシカル日本 > エシカル市場拡大へホテルが理想の流通先~進化するエシカル⑫ 坂口真生 
連載
2016/05/06

エシカル市場拡大へホテルが理想の流通先~進化するエシカル⑫ 坂口真生 

fukuhara
エシカル日本

 5月の大型連休を利用し、多くの読者も国内外へ旅行に出掛けられたでしょう。さて、そんな旅行の際に必須なものといえば、“宿泊先”。宿泊先を選ぶ際の基準は目的や状況によりけりかと思いますが、今後そういった宿泊先選びの新たな基準の一つになるかもしれない「BIO HOTEL」という取り組みをご紹介します。お話を伺ったのは日本ビオホテル協会代表理事の中石和彦氏です。

 BIO HOTEL(ビオホテル)とは、滞在するゲストの健康や自然環境に配慮した安全・安心で健やかな安らぎのあるホテルです。食事や飲み物はすべて自然素材。石けんやシャンプー類、コスメ、タオル、ベッドリネン類、さらには施設の建材や内装材も可能な限り自然素材を使用することが目指されています。
 中石氏「欧州のビオホテル協会は2001年に発足しました。ビオホテル協会は世界で唯一かつ非常に厳しいBIO基準を規約としています。志の高いホテルや生産団体が集まり、ドイツ最大の民間有機認証団体“Bioland”のサポートを受けて発足しました。その厳格な基準を満たした加盟ホテルは、ドイツ、オーストリア、イタリア、スイス、フランス、スペイン、ギリシャの7カ国に約90軒。私たちBIO-Hotels Association,Japan(BHAJ)は、同協会の公認を受け、13年5月に発足しました。今月5月にいよいよ国内初のビオホテルが誕生します」

オーガニック調達に向けて
 坂口「海外と日本ではオーガニック市場自体の格差が大きい。その影響はありますか?」
 中石氏「影響は多大にあります。オーガニック業界で良く参考にされる基準に“オーガニック比率”というものがあります。これはその国での有機農業保有率や有機消費流通率などを総括した比率ですが、一番オーガニック化が進んでいるオーストリアで20%、次いでスイスは15%、ドイツは5%とされています。それに対して日本は0・2%をようやく越えたばかり。つまり日本ではオーガニック食品、商品そのものの調達自体のハードルが高いのが実情です。しかしハードルは高くとも調達は可能ですし、近年有機生産者は増える傾向にあります。そしてその供給体制を構築していくことは、私たち協会の本来の目的でもあります」
 坂口「ビオホテル認証を受けるメリットは何ですか?」
 中石氏「ビオホテル協会は認証ホテルに対し、PRやマーケティング、そして仕入れ等の体制整備サポートをする役割を持ちます。ビオホテルが大切にするのは、地域の生産者とのネットワークです。生産者にとっては、自分のつくるものを提供する場所が常にあること。運営者にとっては、顔が見える信頼できる生産者がいること。ゲストにとっては、自分の体や心をつくる食べ物、ライフスタイルを見つめ直すこと。これら全てが”しあわせになる、原点に帰る場所”というビオホテルのキャッチコピーと結びつき、ビオホテルに関わるひとりひとりのメリットになれば何よりだと思っています」

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地域生産者と関係を構築
 坂口「エシカルブランドを市場に広めたい私にとって、ビオホテルは理想的な流通先ですね。ぜひ様々なブランドを紹介させて欲しい」
 中石氏「どしどしご紹介ください(笑)」
 坂口「日本第1号となるビオホテルをご紹介いただけますか」
 中石氏「長野県北安曇郡にある”八寿恵荘”です。有機JAS認定を取得している自社農園で栽培された有機野菜を中心に、地元のこだわり食材を使った料理が楽しめる宿泊施設です。さらにこの施設では、敷き布団や掛け布団、枕、毛布などの寝具すべてがオーガニックコットン100%のオリジナル・リネンというのも大きな特徴です」
 旅行という個人消費にとって大きな割合を占めるカテゴリに、新たなエシカル消費の選択肢が増えることは、エシカル消費を推進する一人としてとても喜ばしいことです。私はホテル運営とは、小売業やサービス業にとって、あらゆる要素が詰まった究極の場であると以前から考えています。そしてそれが故に、消費者に与える影響も大きいでしょう。
 欧州では「休暇はビオホテルでなければ気持ちが悪い」という環境意識の高いリピーター層が育っているそうです。日本ビオホテル協会では、今後年間3軒を目標にビオホテル認証を進めていきたいとのこと。多様なビオホテルが生まれてくることが待ち遠しく、楽しみです。

写真は上から渋谷の新拠点となるキッチンスタジオで(右が中石氏)、日本初の「ビオホテル」認証を取得した八寿恵荘(長野県北安曇郡)を紹介するパンフレット

さかぐち・まお/アッシュ・ペー・フランス株式会社 roomsエシカルエリア ディレクター

環境新聞2015年5月13日付掲載

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