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2016/11/08

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~② 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 近年、特に今年は大雨や猛暑、火山活動や地震など、数々の異常気象と地球環境の変化を肌で感じる方も少なくないだろう。農作物も今の土地で同じものが数年後・数十年後も変わらずに育てられる環境にあるか、誰も断言することはできない状況だと言える。

 私たちは毎日何かの命を頂きながら、その食に支えられて今日を過ごすことができる。この当たり前のようにある日々を支える食と環境・そして地球について想いを馳せ、何を為すべきかを考え、行動に移す必要があることは、わかっていてもなかなか難しい局面も多い。

 農業の在り方を考えた時に、その農業由来の環境汚染や人々の安全について、何を軸に取り組んだら良いのか。その一つの手法として前回、GAP(Good Agricultural Practice)について紹介した。日本でGAPと言えば、各県が制定したもの、農水省のガイドライン、一般財団法人日本GAP協会によるJGAPや生協のGAP、そして前回紹介したGLOBALG.A.P. など、いくつか存在しており、広がりと共にどれに取り組んだら良いのか、高く売れるのかなど議論が交錯している。

 GLOBALG.A.P.-NTWG (技術作業部会)事務局、およびGLOBALG.A.P.協議会事務局長の今瀧博文氏は、その状況をGLOBALG.A.P.の紹介を兼ねて以下のように語っている。

 「GLOBALG.A.P.は国際的に主流となっている農業生産工程の第三者認証プログラムであり、農産物を中心とした持続可能な農業を目指すものです。さらにその範囲は現在、水産養殖や畜産、飼料作物生産や、食品流通におけるトレーサビリティの連携確認にまでおよび、非常に広範囲な体系となっています。またその狙いは、安全な食品の生産・取引、生物多様性と農業生産の共存、環境保全と総合的病害虫雑草管理などを包含し、持続可能な未来を構築するために、流通小売業を通じて世界の農業生産者と消費者を結びつけることです。

 現在世界の15万戸以上の生産者が実践しており、世界130カ国以上で認証が発行されています。これは農業生産工程管理の大きなうねりであり、一方で世界の農業特性と地域差を認めつつ、最低限の食品安全を確保する基準であるため、国際的に主要なスーパーマーケットや食品事業者がこの認証を取得した農場からの農水産物を受け入れています。

 この認証の発祥がEUであったため、ヨーロッパ型農業のための認証であるとか、小売業が生産者に押し付けている取引条件であるという誤解を持つ方もいらっしゃいますが、今はEUだけでなく世界各国で実践されており、この認証を取得することで農業生産者は世界の流通につながることもできる訳です。

 また、世界の人口は最早90億人では収まらない勢いで増大しており、一部の先進国が一部の農業生産国から食料を調達するのではなく、世界中の農業生産者がある一定レベル以上の農産物を世界中に供給する世界になっていくと考えられます。

 その時に、各国バラバラな食料安全基準や農業生産工程では無駄や制約が多いことになります。GLOBALG.A.P.はこのような重複や無駄を省くべく、さまざまな他のGAP(農業生産工程)認証と共通化できる部分は共通化して、生産者の負担を軽減しようとしています」

 2年前、宮崎で大々的に開催されたシンポジウム、GLOBALG.A.P. ツアーが今年、東京で開催される。私も参加させて頂く予定だが、その案内によると、日本で広がるさまざまなGAPについて、「生産者の多くはGAPの本質を見極められなくなっています。そこでは、 『差別化』、『高付加価値』、『GLOBALG.A.P.は難しい』などという誤解で満ちあふれています。今回のGLOBALG.A.P. 2015ツアージャパンでは、前回ツアーから2年経ち、世界は何を見ているか、何を求めているかを理解し、共有します」と紹介されており、国内外からの関係者が集まり紹介や議論がなされる予定だ。

 食品安全については当然のことながら、労働安全や、特に環境保全の議論や取り組みの重要性について、納得の上で取り組むことが必要なのではなかろうか。特に日本では輸出やオリンピックに向けての議論が目立つが、一歩引いて冷静に考えると、農業従事者とその地域の環境、そして私たちのいのちをどのように繋いでいくのか、さらにこの異常気象や今後作物の不作等が生じ、もし海外からの輸入が困難になった場合に、日本国内での高齢化が続く農業従事者から若手への伝承や、環境対策も踏まえて、いかに農業を守り育てていくのか。国際的にはどのような議論がなされ日本はどう対応していくべきなのか。GAPや有機農業など、農業に関連する認証がその根本を見直す機会になれば幸いである。

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞2015年8月25日付掲載

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