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2017/03/28

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~ ⑧ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

 すべては命があり、その命の価値はビジネスの世界では見えなくなってしまう時があるのではなかろうか。食に繋がる命から、違う用途でも間接的に人々がお世話になっている動植物の命がある。その命や世界について学ぶ機会はさまざまだ。その一つに、絵本がある。

 絵本の世界から子供たちと共に知り、考え、そして自分の言葉で再度伝えていく時間。寝る前の読み聞かせから、休日の紙芝居まで実にお話を聞くのが子供たちは好きなので、どんな絵本を選ぶか悩みは尽きないが、時々テーマを決めて題材を選ぶ時がある。

「いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日 」では食といのちそのものを考えさせられるし、私の4歳と7歳の子供たちも真剣に耳を傾け、ある日突然、食卓に並ぶものを「これはどこから来たの?」とか、お肉が出ると、「何のお肉さんなの?」と味だけではなく、自分なりに知り、納得してから「いただきます」をしている姿を目にする。

 また、「世界で最も貧しい大統領」として知られているウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領の感動的な話は、「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」という絵本から、暮らし方まで家の中で議論になるし、「バーバパパのはこぶね 」では、人間の手によって地球の空気や水がよごれる光景や苦しんでいる動物たちの姿、バーバ一家と動物たちがロケットで地球を脱出してしまうが、その後どう世界や人々が変化していくのかが描かれており、40年以上前に描かれた絵本が今も新鮮に、そして同じ課題を私たちはまだクリアできていない事実を痛感する。そして、子供たちと共に真剣に今の社会について、そして私たちが今何をしていかなくてはならないかをベッドの上で議論していたりする。

 この子供たちが未来について自分事として考え始める頃、地球環境や動植物、そして日本では少子化の中、日々共に過ごす相手が可愛いペットかもしれないし、生活の一部にさまざまな命に寄り添い、そして依存しながら毎日を過ごすことだろう。
 今も、動物を飼っている方は数多くいらっしゃる。家族のように愛する犬や猫、鳥などペットと共に過ごすことで、セラピー効果に癒され、支えられたりする。

 個人的な話だが、私が結婚した時に母はショックのあまり塞ぎ込んでしまい、さらに私が実家に帰って隣にいても寂しくて泣く日々を送っていた。飼っていた鳥も寿命で亡くなってしまったので、猫を飼うことにし、この猫達に癒されて母は何とか通常の生活に戻ることができた。今では猫たちがいない生活は考えられないくらい子供のように、いやそれ以上に可愛がっている様子である。

 一方で、普段の生活に動物の恩恵を受けているのは、接している動物だけではなく、着る洋服や布団など、姿は見えないけれど私たちを心身共に包んでくれている動物たちがいる。その動物については、認証の観点からも注目され始めている。過去にも紹介したが、例えばRDS(Responsible Down Standard:責任あるダウン調達のための基準)では、ガチョウやアヒルを含む全ての水鳥に適用され、ホリスティックな基準について以下のような項目が含まれている。①空腹やのどの渇きから守る②不快を与えない③痛みや怪我、病気から守る④生物の習性に則している⑤恐怖や苦痛を与えない。また、強制的餌付け、ライブプラッキングの禁止や、孵化から最終製品までのサプライチェーンを認証で繋ぐことで、トレーサビリティーを確保している。

 普段目にすることがない原材料調達の現場から、身近にあるペットの世界。そして多くの命の恩恵を再考し、ビジネスにおけるエシカルな視点と愛のある新たなデザインが求められつつある。

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

写真は「RDS(Responsible Down Standard:責任あるダウン調達のための基準)は全ての水鳥に適用されている」

環境新聞2016年4月20日付掲載

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