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連載
2015/09/09

ソーシャルコンシェルジュのエシカル手帖②~理想のサステナブル・タウンを求めて 林民子

fukuhara
エシカル日本

“ソーシャル コンシェルジュ”とは、 社会貢献やエシカルな暮らしの案内役という意味で、NPO設立の2006年に私が造った言葉です。以来、様々な形で社会や環境に配慮した衣食住を提案してきました。
 ひとりひとりのエシカルな暮らしはもちろん大事。そして同様に、自分が生活する地域や自治体が、環境や社会に配慮した循環型のコミュニティでなければ、どちらにとっても持続可能ではないですよね。だからこそ、行政の運営や管理、地域の環境・社会問題の解決に取り組むNPOの活動などに関心を持ち、一緒に街づくりに関わることは、とても重要なのではないでしょうか。個人とコミュニティ、その両輪がうまく回らなければ、多くの人にとって幸せな未来を創ることはできないのですから。
 では、あなたにとって、住み心地の良いサステナブルな町とはどんな町でしょう?現在日本では、環境省が認定した「環境モデル都市」(英語では、エコモデル・シティ/Eco Model City )が23都市あります。
 この連載の中で、隔月ではありますが、サステナブル・タウンをテーマに、全国の環境モデル都市の取り組みを紹介していきたいと思っています。

環境新聞ウェブ用写真2.jpg

 初回は北海道ニセコ町です。なぜなら、「環境モデル都市」とGoogle 検索すると、トップに出てくる自治体がこの町なのです。

 今回、ニセコ町の片山健也町長、そしてニセコ町役場の環境モデル都市担当部署である、企画環境課の山本契太課長と大野百恵主任にお話を伺うことができました。
 「ニセコ町は14年に環境モデル都市として認定されるはるか前の02年から、町民と行政が一体となって、水循環の保全に重きを置いたニセコ町環境基本計画を策定していました。
 当時、私はゴミの循環処理システムを担当していました。他の自治体に先駆けて17種類以上のごみ分別・有料化が施行され、集めた生ゴミ、牛糞、下水道汚泥から堆肥を作り、農家へ循環させる堆肥センターも設立し、ゴミリサイクル率が当時7%だったのが、今では80%となっています。
 また化石燃料に依存せず、地域資源を生かした自然再生エネルギーの導入に力を入れ、二酸化炭素排出量を50年までに86%削減という目標を目指し、様々な取り組みを行っています」と片山町長。
 ニセコ町は「景観保全・開発規制」「資源・環境保全」「地域内エネルギー循環政策」の3つの環境方針を定め、総合的なアプローチで施策を展開しています。
 同町の基幹産業は、観光業と農業。どちらも自然資源があってこそ成り立っている産業であり、生きていくためにその保全が必須であることは、町民の共通認識です。
 特に重要視しているのは、①民間事業者の協力による環境アクションプランの導入②地中熱や水力発電などの自然エネルギーの活用③町民主体の草の根運動――の3点。中でも自然エネルギーについては、将来的に「ニセコ自然エネルギー供給会社」が生まれ、自然エネルギー地域循環システムが構築できればと考えているそうです。
 地中熱ヒートポンプを利用した冷暖房施設を完備した公共施設が、町民センター、有島記念館、コミュニティFM局、グループホーム、ニセコ高校のビニールハウスの5カ所あります。豪雪地帯として有名であり、その雪氷熱を利用した米貯蔵施設も。アンヌプリスキー場では、今冬からゲレンデにLEDライトの試験導入も始めるそうです。
 サステナブルな観光も推進。歩くことでその地域の魅力を発見する「ニセコフットパス」や観光用の電動レンタサイクルを整備し、車では味わえない町内観光も堪能できます。
 世界的なスキーリゾートとして既に有名なニセコ町。今後は“国際環境リゾート”として進化し、さらに世界の注目を集めることでしょう。

写真はニセコ町片山健也町長(上)と ニセコ町企画環境課の山本契太課長大野百恵主任(下)

環境モデル都市ニセコ町

http://www.town.niseko.lg.jp/machitsukuri/kankyo/post_165.html)

 

はやし・たみこ/NPO法人ソーシャル コンシェルジュ/SHOKAYジャパンオフィス 代表

環境新聞2015年9月9日付掲載

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