エシカル日本 > 進化するエシカル①~気付きの連鎖作る 坂口真生
連載
2015/03/31

進化するエシカル①~気付きの連鎖作る 坂口真生

noday
エシカル日本

 「それエシカルだよね?」この記事を読んでいらっしゃる方々の中で、そのような会話が職場やプライベートの場で使われるケースはどのくらいあるでしょうか? 恐らくほとんど無いだろうと思います(笑)。そもそも「エシカルって何?」という人の方が多いのではないかと思います。

 Ethical(エシカル)という言葉は、「倫理的な」「道徳上の」などの意味を持ち、現在一般的な使われ方として、環境や社会に配慮する行為を示す言葉として使われています。「エコ」や「ロハス」という言葉は良くご存知かと思います。では何がエシカルと違うのか。
 例えば「エコ」は環境への配慮を示すことができますし、「ロハス」は自己啓発のライフスタイルの要素を広く持ちますが、エシカルが持つ「社会貢献の意識」「人への支援・分かち合い」といった要素は持ちません。エシカルは言うなれば、エコやロハスがカバーしない社会や人への配慮まで踏み込んだ、現代の意識の進化から生まれた新しいキーワードだと思います。

日常の中にあるエシカル
 通常の生活を送る中で、エシカルに直接に関わる最も身近な存在は、エシカル商品だと思います。環境や社会に配慮して生産・販売されるエシカル商品を販売・購入することで社会貢献や環境改善へつながりが生まれます。
 商品が消費者の手に届くまでの小売りという流通の仕組みは、原料生産者・製造者から卸業者・販売者、そして消費者へとバトンが渡っていくので、そこに関わる人の数も多く、それだけ多くの意味で影響力が強いのが特徴です。
 具体的な例として、ジーンズメーカー大手のLeeが取り組む「Born in UGANDA Organic Cotton Project」では、ウガンダで栽培されたオーガニックコットンで製品を生産・販売し、売上の一部をウガンダに寄付することでコットン農民や水に困る人々を支援する活動をしています。このプロジェクトはチャリティーという支援の要素だけでなく、賛同する多くの著名人や大手企業とのコラボレーションを生み、販促効果や企業価値の向上も同時に創り出しています。
 こういった例のように、企業は従来のCSR活動に加え、エシカルな視点での生産、商品開発、ブランディングを取り入れることで消費者のニーズを掘り起こすことができるかもしれません。

消費市場とエシカルブランド
 現在私はrooms(ルームス)という国内最大級のファッション・デザインの合同展示会(アッシュ・ペー・フランス主催)において「エシカルエリア」というコンセプトエリアのディレクターをしています。
 エシカルエリアではエシカルなマインドを持つブランドを集積し、来場するバイヤーやプレスに紹介します。BtoBの展示会ですので、来場者の目的は次シーズンの販売商品の買い付けや、新しい情報や業界の動向を獲得することです。
 このエリアに出展するブランドに対して、私が必ず最初に話すことがあります。それはバイヤーやプレスに「良いコトをしているから選ばれる」のではなく「商品のデザインが良いから選ばれる」ことがスタートだということです。
 そしてそれは消費者との間でも同じことが言えます。最初は「社会貢献につながるから」という理由で購入してもらえても、商品力がなければ2度目は無い。「デザインが良い」と選んでもらったうえで、その付加価値として社会貢献や環境改善につながるストーリーがあることが大切ですし、本来のかたちだと思っています。そのハードルは正直高いのですが、その高いハードルを越えることができれば、ストーリーを背景に持つエシカルという概念は大きな強みとなるのです。

気づきの連鎖
 roomsエシカルエリアのテーマは「気づき」です。商品やサービスの背景にあるストーリーを通し、少しでも多くの人に社会や環境問題に気づいて思いを馳せてもらいたい。現在は展示会を通し、エシカルイベントのプロデュースやノベルティーの提案なども行っています。そういったプロジェクトを通して気づきの連鎖(スパイラル)が起きるきっかけを作っていきたいと思っています。
 今後この連載では、さまざまなフィールドの方々を私のエシカル視点から選ばせていただきご紹介して行きます。どうぞお楽しみに!

さかぐち・まお アッシュ・ペー・フランス/roomsエシカルエリア ディレクター

環境新聞2014年6月11日付掲載

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