エシカル日本 > 進化するエシカル②~原点回帰はエシカル進める道 坂口真生
連載
2015/04/13

進化するエシカル②~原点回帰はエシカル進める道 坂口真生

fukuhara
エシカル日本

1990年前後に大流行したファッションアイテムを覚えているでしょうか?そのアイテムとは、「ケミカルウォッシュ・デニム」。通称「脱色デニム」とも呼ばれ、デニム生地に薬品を用い色落ちさせる加工方法の一つです。その流行全盛期を支えた日本最大のジーンズメーカー「リー・ジャパン」が近年、オーガニックコットンを積極的に取入れています。リー・ジャパン取締役の細川秀和氏に進化するエシカルのかたちをお聞きしました。

ジーンズ生産の環境負荷
 細川氏「我々ジーンズメーカーは全製品に占める綿の割合がとても高い業種で、染色や加工の工程で薬品や水を大量に使うため、環境負荷が高いという事実があります。そうした製品を生産販売するジーンズメーカーだからこそ、環境意識を強く持つべきだと考え、05年頃からオーガニックコットンを積極的に取り入れるプロジェクトを始めました。07年にはウガンダからオーガニックコットンを輸入して製品作りを始め、その商品の売り上げの2%をNGOのハンガーフリーワールド(現地の井戸建設や安全な水の提供で生活環境の改善に貢献する非政府組)に寄付しています」

DSC_0066.JPG

オーガニック割合は3割
 坂口「生産商品全体に対するオーガニックコットンの割合はどのくらいですか?」
 細川氏「全体の約3割ほどになっています。これはオーガニックコットンとプレオーガニックコットンを含めた割合です」
 坂口「プレオーガニックコットンという言葉は最近良く耳にしますね」
細川氏「オーガニックコットンに認定される前の畑で収穫された、無農薬で育てられたコットンのことをそう呼びます。無農薬農法開始してから認定までに3年かかります。その間はオーガニックコットンとして認定されないうえに収穫量が減ってしまい、またオーガニックコットンと比べると買取り値が上がらず農家は通常の約20%?30%の収入減となってしまいます。プレオーガニックコットンを買い取ることで、農家のオーガニック移行にかかる経済的負担を軽減しオーガニックへの移行をサポートすることに貢献できます」

広がる認知度
 坂口「現場レベルでもオーガニックコットンへの認知度は上がっているでしょうか?」
 細川氏「我々がオーガニックコットン製品を市場に投入してから8年経ちますが、販売する側と購入する側の両方での認知度が上がっている実感があります。小売店の販売スタッフさんは環境に対する興味の意識も高く、勉強しているので知識もあります。また現在、当社の商品を購入いただいた方のうち10人に1人がオーガニックコットン商品を選んでいただいています。これは5年前に比べて10倍となっており、消費者への広がりを感じています」

未来の世代に伝える
 坂口「未来を作っていくという意味で若い世代にオーガニックコットンのストーリーを知って貰うことが大切ではないかと思うのですが、若年層にとって生産国に対するこだわりはあるのでしょうか?」
 細川氏「ここ最近、高校の授業でお話をさせていただく機会が増えているのですが、我々が学生だった時代と今の学生達との意識の違いを強く感じますね。我々はMADE IN JAPANなど、生産国にこだわりを持つ世代ですが、今の学生達は自分達が身に着けているものの生産地を知らない。こういった若者世代にどうしたら生産地への興味を持たせることができるか。それが、我々のプロジェクトにとって今後重要なヒントになると考えています」
私も若い世代の無関心を関心に変えることが大切だと日頃から思っています。
 細川氏「我々の生産工程もまだまだ進化している最中です。継続が大事だと考えているので、構えずに自然体で続けていきたい。また、我々ジーンズメーカーが持つ良い意味でのワルさを感じる格好良さと、エシカルが持つ優しさとの『ギャップ」も大事だと思っています」
 大流行が生まれる時代は去ったと言われるファッション業界ですが、仕掛ける側が持つ社会や環境を良くしたいという意識が、新たな市場を創りだす時代になっていると改めて感じました。エシカルを掘り下げることは、時代の先を行くと同時に、原点を顧みることなのではないでしょうか。

DSC_0079.JPG

さかぐち・まお アッシュ・ペー・フランス株式会社/roomsエシカルエリア ディレクター

環境新聞2014年7月9日付掲載

Facebookで更新情報をチェック!

関連記事