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連載
2015/04/16

国際認証講座 ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~② 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

背景の世界伝えるのが認証の意義

 国際的な認証システムが構築される背景は当然様々であるが、日本に比べて欧米発のものが多いのは皆様も感じているだろう。横文字が並ぶ認証が多く、何だか分からないけれど取引先やNGO団体から送られてくるアンケートなどに、アルファベットが羅列された認証を見かけ困惑されているのではなかろうか。もしくは「またか」と思いながら「これは何?」と調べようとすると英文のHPサイトばかりで、理解するのも社内の関係者に説明するのも容易くなく、苦労されているという話も伺う。例えばオーガニック農業では日本の有機JASをはじめ、EU、アメリカのUSDA―NOP、その他個別や各国の認証があり、農業分野で注目のGLOBALGAP、水産のMSC、ASC、食の安全ではHACCPやFSSC22000、パーム油のRSPO、リサイクルのGRS、繊維関連のGOTS、OCS、森林ではFSC、PEFC、また合法木材デューデリジェンス(EUTR)など、弊社関連でも100を超えるプログラムが世界では展開されている。


 そもそもなぜこんなに多くの認証が存在するのか。すべて設立の背景や団体が違うということもあるが、国民性の違いや国際取引における見方・考え方もあるだろう。日本では事業者が環境への取り組みなどを発信した内容について、消費者は素直に受け入れてきた。しかし、日本以外では「それは本当か?」と疑ってかかるのが基本姿勢な場合も多く、では「誰が確認したのか、それは証明されているのか、グリーンウォッシュ(環境配慮をしているように装いごまかしたもの)ではないのか」という見方がされることもしばしばであり、性善説と性悪説によく例えられることもある。
 国際認証の設立背景はそれぞれプログラムによって違うのだが、一つの例でいうと、環境や生物多様性の観点から、早急に解決しなくてはならない問題点について、国際NGOやその原材料に大きく依存している企業等が中心となり、様々な利害関係者が集まって円卓会議のような場が設けられる。そして今抱えている重大な問題解決に向けて、誰がどのようなステップで行動に移すのか、目標と具体的な行動などを話し合い、基準が策定されて、認証システムが構築されていく。そのリーダーシップをとるのは先陣を切った企業やNGOであったり共働の場合もあれば、認証機関が独自に策定し発展させた事例もある。


 また先ほど挙げたように業界や扱う製品によって認証も多岐にわたるが、同じ「認証」というキーワードであってもそのレベルは様々であり、審査を行う者と受審する者の関係性、書類だけのものか、現地も確認するのか、そもそも認証機関が認定を受けて活動しているのか等々、注意すべき点も多い。逆に言えばお金を払えばもらえる認証やラベルではあまり意味をなさないとも言える。そこで一つのポイントは、その認証は誰が策定したのか、所有団体は?国なのか国際団体なのか、その構成メンバーや活動は何か、そして誰が認証の実務を行っているのかである。
 また、ISO14001のような環境マネジメントシステムの認証と、生産される製品まで関与する認証があり、その場合トレーサビリティーを確認し、認証材と従来の材とが混ざらないように管理されているのかなどを審査時に確認するものが多く、分野は違っていてもサプライチェーンにおける環境・社会・経済面について同じようなポイントを基準の要求事項に含むことが多い。


 環境・社会問題の解決に向けて、持続可能性は当然のことながら、透明性やCSVについての議論もあり、CSR担当者としても経営層の判断もより本業の中に組み込んだ具体的な行動について求められている。その中で、消費者が手にする製品が持つストーリーを語り、その背景に広がる世界を広く伝えていくことに認証の意義はあるとも言えよう。企業の活動が環境や社会に配慮したものとなり、優先的にその企業の製品を購入する消費者が増加することで、利益のみで配慮を怠ってしまう企業との差別化を図ることにも繋がる。そのお手伝いの一環として認証という手段があるにすぎない。次回以降は、具体的な認証の紹介を織り込みながら、その背景に広がる世界と国際的な動きについて触れたいと思う。

写真は2013年にインドネシアのメダンで行われたRSPOの会議

やまぐち・まなみ/Control Union Japan 代表取締役

環境新聞2014年6月25日付掲載

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