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2016/05/24

国際認証講座 ~環境・社会・生物多様性・そしてエシカルヘ~⑨ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

   持続可能な原材料調達や自然資本の議論が進む中、製品の原材料の調達から製造・販売までのサプライチェーンにおいて環境・社会的リスクがないか、そもそも原料がどこからどのように来ているのか、自社製品は果たして大丈夫なのか…。といった声を伺う。NGO等の活動や発言、取引先からのヒアリングにも耳を傾けつつ、そもそも自信をもってリスクが低いということをどのように確認していったらいいのか。

 今、世界中で運用されている認証は、複雑化するサプライチェーンの中、一つ手前の調達先(自社の取引先)が認証製品を提供することで、そこからさらに原産地等の地域まで遡らずとも、一定の環境・社会的リスクが回避されていることを証明する手段だともいえる。一方で、木とかパーム油とか綿花など一つの原材料については良いが、製品を構成する他の原材料はどうなっているのだろうか?という次の議論へと進んでしまい、困惑される方も少なくないだろう。

 それぞれの分野の認証を自社の調達方針に取り入れ、うまく活用しながらサプライヤーやすべての利害関係者と対話し、巻き込みながら全体である意味の覚悟を持って取り組んでいかなくてはならない時期かもしれない。そこには社内や違う部署を説得し、環境や生物多様性、持続可能な取り組みが経営としても営業の側面からも、単なるコストと見られないための意義をどう伝え、時にはビジネスチャンスにも繋がることを説得しなくてはならないだろう。

 そこで、認証プログラムの利点は何か。まず疑問点として、①どのように信頼性を確認するのか?②確かな原料を使用しているか?③製品価値を買い手や消費者がどのように理解するのか?――などが挙げられる。

 その回答としてはいくつかあるが、まず、「国際基準をもとに確認する」ことでグローバルな活動であればあるほど、国際的にも認知され採用されている基準をもとに確認する必要があるだろう。次に、「第三者機関による利害関係のない公平な審査」による信頼性、環境への配慮や品質を確実にすることで、確かな原料の使用に繋がる点や、小売業者と生産者によって責任を確認し合うという利点もある。他にも、「社会的責任を果たすための指標」、「生産偽装に関する独自の信頼性の提供を確実にする」等々。

   また、お客様の声として伺う事例としては、「外部から審査員が来ることで、社内だけで指導するよりも社員の意識が変わり、積極性がみられるようになった」、「新たな取引先が生まれビジネスが広がった」、「日本だけではなく、海外への進出に役立った」、「勉強になり、問題意識を持つようになった」などがある。また、中小企業の方からは、「文書管理や教育の仕組みが構築されて、社長や上司の頭の中を棚卸できた」という声もあった。

 国際的な取引の中で、そのそもそも原材料は持続的に調達できるのか、環境・社会的リスクは潜んでいないのかを様々な方法で確認し、ビジネスに活かしていく中で、認証は決して魔法の杖ではないが、活用法次第では自社内のみで取り組む労力を軽減する一助となるだろう。新たな活路を見出しながら業界全体で取り組むことで、企業の経営としての持続可能性と、環境にも配慮した持続可能な社会と未来の構築へと共に繋げていかなくてはならない。認証が必要とならない社会がある意味理想だとも言える。そして、今の子供たちが20年、30年後大人になった時に、この素晴らしい自然と世界が変わらず残され、持続可能な未来を創造できているかどうかは私たち次第なのである。

写真…「子供たちが大人になった時に自然と世界が残されているか、大人たちに係っている」

やまぐち・まなみ/株式会社Control Union Japan 代表取締役

2015年2月25日付環境新聞掲載

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