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2016/08/23

「レア・アース仮説」とエシカル消費(全3回 中編) 山本良一

fukuhara
エシカル日本

 さて、地球は30km/sの速さで太陽の周りを1年かけて回転している。地球と太陽の距離は1億5千万キロメートルで、近過ぎず、遠過ぎず(生命居住可能領域)、地球表面には水が存在し生命の誕生と進化に有利であった。

太陽系は天の川銀河の中心から2.6万光年の距離を240km/sの速さで2億年の周期で回転している。太陽系が誕生して46億年が経過したが、その間23周したことになる。天の川銀河自体はウミヘビ座の方向へ、600km/sの速度で疾走している。これはなんと1日に5,184万kmの距離を進む速度である。

 天の川銀河の中心部にはブラックホールや活発な活動をする星々があり、一方、周辺部には生命を構成する多様な元素が存在しない。太陽系は銀河の中心から近過ぎず、遠過ぎずの生命の誕生と進化に有利な領域(銀河生命居住可能領域)で形成された。

 実は太陽系の構造もシンプルで地球で原始的生命が誕生し長い時間をかけて進化するのに有利であった。太陽の周囲を惑星が同心円状に、ほぼ同じ平面を同じ方向に回転していて、この軌道は数十億年安定していたと考えられている。巨大惑星の木星が地球に代わって多くの隕石を吸収してくれた。地球には大きな月があるために地球の軌道傾斜角が長期間安定に保たれた。

 地球の軌道の離心率は0.017でほとんど円軌道であり、太陽からの距離の変化が少なく生命存在に有利であった。太陽の質量についても、最も重い星は太陽質量の100倍もの質量をもち、最も軽い星は100分の1程度であり、星が放出するエネルギーが生命生存に適度であった。ただし地球に似た惑星は既に2千個程度発見されており、広大な宇宙には太陽系に本当に似た恒星系が存在する可能性はあるかも知れない。しかし以上の議論から地球が生命の誕生、進化に有利な奇跡の惑星であることが理解されるのである。

 地球は誕生以来、火の玉地球、水惑星、陸と水の惑星、生命の惑星へと進化し、その後は生命と地球が相互に影響を及ぼし合いながら共進化してきた。原始的生命は地球誕生間もない40億年前に誕生した。しかし原始的生命から多細胞生物の誕生までに何と宇宙の歴史の1/4にあたる34億年もの歳月を要した。6億年前のカンブリア大爆発によって今日の動物のほぼすべての祖先が誕生した。

 その後、少なくとも5回の生物種大量絶滅を経て700万年前に人類の祖先が誕生した。人類も判明しているだけで19種が絶滅し、私たちの直接の祖先ホモサピエンスが出現したのはやっと20万年前のことである。ホモ・サピエンスも7万年前のインドネシア・スマトラ島のトバ火山の大噴火による寒冷化の影響で人口は1万人程に減少したと推定されている。このはるかなる生命進化の旅路を経て私たち、一人一人があるのである。これを要するに私たち一人一人の存在に全宇宙が関与していると言っても過言ではないであろう。

2.地球のような惑星は宇宙的に見て稀であるというレア・アース仮説

 私たちの体は60兆個の細胞と100兆個の細菌などからなることを考えるだけでも、細胞が1つだけの原始的生命からの人類への進化に40億年という途方もない時間がかかったことが理解されるのである。原始的生命の誕生、生命の暗号DNAの形成、光合成の開始、複雑な細胞の誕生、有性生殖の開始など生命進化の跳躍が続かなければ今日の人類の誕生は無いのである。また原始的生命から知的生命までの進化は一直線ではなく、様々な偶然が介在したことは、知的生命の出現がきわめて宇宙的に稀であることを示唆している。

 私たちには心があり、また愛、慈悲、良知があり、宇宙・地球・生命の進化の歴史を認識できる地球上では初めての生物である。宇宙的に見て地球ならびに複雑な生命の出現はきわめて稀であるという仮説はレア・アース仮説と呼ばれていてピーター・ウォードとドナルド・ブラウンリーによって提唱された。これまでの議論から地球に類似した惑星は宇宙に大量に存在するかもしれないが、複雑な生物、知的生命の存在はきわめて稀であると考えられるのである。

 銀河は密集して分布しているが、星の平均間隔は5光年程度と散らばっており、例え近傍に知的生命、地球外文明が存在したとしても交流するのは物理的に困難である。少なくともこの半世紀にわたる電波観測によっては地球外知的生命の発する電波は観測されていない。

 人類の存在にとって地球生態系(自然)は不可欠であるが、一方知的生命である人類を失えば自然は盲目となるのである。人類と自然は共に宇宙的に貴重であると言っても過言ではないであろう。

 

写真は高知県・鳴無神社 「地球生命圏こそがパワースポット、ご神体である」と訴える筆者が示す国内パワースポットの事例の一つ

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