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2017/05/22

国際認証講座・第二部 ~持続可能な社会とエシカル、認証のその先へ~ ⑪ 山口 真奈美

fukuhara
エシカル日本

  「今日あなたはどんな1日を過ごしましたか?どんなお布団で眠りから目が覚めたのでしょうか。その布団の中身は羽毛ですか?着替えた洋服はどんな素材でどのようなプロセスでできているのでしょう?メモをした紙、また顔を洗った時に使う石鹸や拭くタオルのストーリーをご存知でしょうか?」

 完全にエシカルなライフスタイルを過ごすのはとても大変なことであり、多くは知らず知らずのうちに問題と繋がっていることが多いが、消費活動が与える影響が大きいとして、消費者庁では倫理的消費調査研究会が開催されてきた。その中間取りまとめでは、認証ラベルの普及などの重要性について触れられているが、倫理的消費の前にどのような生産がなされているのかが、まずスタートラインとして必要なのではなかろうか。

 でも、持続可能な大会を目指し、持続可能性に配慮した木材の調達基準の案や、アクション&レガシープランについて議論がされている。その中で認証については、業界団体や事業者からは非現実的で受け入れられないという点も多々あるかもしれない。しかし、今までの産業構造で本当に問題がなかったか、諸外国が関係する原材料調達については特に議論になるところである。

 農業ではGlobalGAPや有機(オーガニック)を広めていこうという動きがあり、2020年目指して国産の底上げと、さらには日本の食を世界へ発信していくことを検討し始めているが、一つまた混乱の原因が消費者向けと事業者間のBtoBとの話題で生じている。関係者からみたら簡単なことなのだが、認証とラベルが「認証ラベル」として一つのカテゴリー化された時に、認証によっては、そもそも認証取得者や認証製品にすべて独自のラベルが付くわけではないということを認識されておらず、「認証=ラベル」だと勘違いされるケースがあるということだ。認証を取得し製品にラベルを添付すれば高く売れるのか、というと必ずしもそうではない。

 取得の理由によっては、調達の方針とリスク回避のために採用したという事例もあり、チェーンが繋がりラベルがあるのであれば最終製品に添付することも可能だが、任意であるためラベルを付けずに店頭に並べることもあれば、そもそも製品ラベルが存在しない認証もある。認証はお金も手間もかかるし懸念されるのも事実だが今あるその商材の価格が、環境社会的コストを反映した妥当な金額なのかという、そもそもの疑問についても考慮する必要があるだろう。

 社会的責任や調達方針の中でサプライチェーンにおける認証の有無を確認されることがあるかもしれない。企業の担当者や一般消費者、さらには行政も含めて各業界では関係者による議論がなされてきたが、今まさに縦割りではない連携と正確な情報交換が求められている。そして、その社会での些細な混乱がオリンピック・パラリンピックを巡る議論を契機に、認証というキーワードが乱立し、透明性・正当性・そしてその結果ラベルがあるものについては積極的にPRしてもらいたい反面、運用方法に至るまで、十分な議論が再度必要になってきているように思う。

 5月に東京で行われた「エシカルに纏わるラベルと認証制度 シンポジウム」では、200名近い方に来場頂き、キャンセル待ちの方々も多く、次回以降のお問い合わせも多く頂いている。その来場者の中には「各業界の認証について知ることができた」、「パネルディスカッションでの事例が分かりやすかった」、「総括したエシカルラベルがあると思っていた。もっとわかりやすいものがあるといいのだけれど」など、さまざまな感想を頂いた。エシカルなライフスタイルを目指さなくても、非エシカルな行動を好んで選択したい、悪影響な連鎖を纏ったアイテムを敢えて愛用したい、という方にはあまりお目にかからない。

 誰でも家に帰れば消費者(生活者)の1人である。企業や行政・NGO/NPOなどさまざまな立場として活動されている皆様が、個人的な想いを反映した望む社会に果たしてなっているだろうか。目の前の現象の少し先にある背景に目を向け、想いと行動を結びつける絶好のチャンスの時代に今立っているのでなかろうか。

写真は、昨年5月26日に開かれた「第1回エシカルに纏わるラベルと認証制度 シンポジウム(日本エシカル推進協議会主催)」の様子(弊社撮影)。さまざまな認証製品が展示され、参加者らは手に取って眺めた

やまぐち・まなみ/Ethical Life Advisor

環境新聞2016年7月27日付掲載

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